7: ◆1aBMjONGbo[saga]
2016/12/11(日) 01:58:22.65 ID:jikEwRPVO
────そこに広がるのは、異世界だった。
そう言ってもいいほどの惨状がヒューの目に飛び込んできた。
ケイシーが愛用している化粧台は鏡が割れ、その破片が床に散乱している。読書家な娘の大きな本棚は倒れ、収納されていた本は横たわる棚の下敷きになり、破れ、抜け落ちたページもまた床にばらまかれていた。
極め付きはベッドの上だった。
中心には横たわり、呻いているケイシー。しかしその様子は尋常ではない。左足は有り得ない方向に曲がっており、右腕からは骨が突き出ている。腹には抉られたような穴が空いており、そこから今なお鮮やかなほどの赤がベッドにシミを作っている。
ヒュー「え……?は…」
あまりの状況にヒューは言葉を口に出すことすらできなかった。
ケイシー「う…おと……っさ…にげ…………」
息も絶え絶えに、ケイシーが何かを言わんとするも、最後まで聞き取る前に轟音がヒューの鼓膜を襲う。
音の出どころはクローゼット。慌てて振り返ると、半分壊れたドアを押しのけるように一人の男がのそりと出てきた。
男「… … …」
男、とは言ったもののその目には生気がなく、ベッドを濡らす血と同じ色の瞳孔が意味ありげに収縮し、口元からのぞく歯は牙、と言った方が適当で人間と言っていいのか不明瞭だった。
ヒュー「あ……あ…?」
目の前の事態を理解出来ずに動けないヒューの前を素通りし、男はベッドの傍らに立つ。
そして、男は右腕をヒューに見せつけるように拡げたかと思うと、男の右腕はいきなり肘先から先が黒く染まり始めた。筋肉は膨張し、血管ははち切れんばかり。指先には1本1本に冷水で研がれたナイフのように鋭利な爪が伸びていた。
その黒色の腕で男はケイシーの右腕を力ずくでもぎ取り、その牙でもって咀嚼し始める。
ケイシー「あっ……があ……ッ、」
意識も朦朧とするケイシーは叫び声をあげることすら許されず、ただただ目の前で自分の腕が喰べられているのを見ている事しか出来なかった。
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