過去ログ - 穂乃果「これからも友達で」【ラブライブss】
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10:名無しで叶える物語(たけのこ饅頭)[saga]
2016/12/14(水) 21:38:39.92 ID:vRldcILQ0


"生きる方法"の話のあとから、あの子はずっと穂乃果の羽を触っている。
そう、穂乃果には羽が生えている。
と言っても、飛べるわけでもなく、小さなコウモリの羽で、あの子と出かける時はマントで隠している。
実は、触られると凄くくすぐったくて、体の真ん中に刺激が伝わり、我慢しないと変な声が出てしまう。
さらに、引っ張られると全身に激痛が走る。
だから寝る時も、仰向けだと眠りにくい。

「どうして、羽を触るの」

純粋に気になったから、そう聞いてみると、あの子はこう言った。

「この羽で、あなたを殺すのです。そうすれば体には傷が残りません」

なるほどと思った。
引っ張られるだけで倒れそうになる激痛が走るんだから、切り落とされたりでもしたら―。
それに加えて、あの子はさらにこう言った。

「記憶が残るかどうか。それはわからないんです」

小さく寂しげな声だった。
記憶がなくなったら、穂乃果はあの子の事を忘れてしまう。
そんなのは嫌だし、穂乃果が生き残ったとしてもあの子とは他人になってしまうなら、死んでしまった方がいいに決まっている。
でも、あの子の存在で、穂乃果は他人の心を考えることができるようになったばかりだったから。
記憶がなくなったら、あの子が一番辛いんじゃないかと思い始めた。
あの子だけが穂乃果の事を知っていて、救うと精一杯だったのに、穂乃果はあの子の事を忘れている。
だから、あの子の覚悟がしっかり伝わってきて、ネガティブな考え方はいけないんだと自分に言い聞かせた。
恋をしたあの子をこれ以上悲しませないために、穂乃果自身も最後まであの子の事を信じなければいけない。
その後に待つ幸せな世界に夢を見て。
あの子と歩む未来を、温めて。

「そっか。いつでも、いいからね。覚悟は、出来てるから。この世界にも、悔いはないからね」

そう言うと、あの子は穂乃果の正面に来た。
しゃがんで、体育座りの穂乃果と同じ目の高さになるようにして。
そのまま、穂乃果の事を抱きしめてきた。

「....私、本当は怖いんです。どうせなら最終日まで待って、誕生日を祝ってからがよかったと思ったりします。でも、早くしなければいけないと思うと、怖いのに、焦ってしまって。誰かを殺すなんてこと、普通の人なら人生の中で経験したことがあるわけないんですから」
「....信じてもいい話だったんだよね。ううん、信じてるから。穂乃果の事をただ殺すだけになる確率なんて、考えてもないでしょ」

するとあの子は、もっと力強く抱きしめながら言う。

「それは確かに、あなたが人間に戻ることは確信していますから。でも、でも、記憶がなくなるかもしれないこと、あなたが痛みに苦しむこと、覚悟はしていたことですが、いざとなったら私....怖くて」
「ダメだよ、そんなこと考えたら。その痛みに耐えるだけで、まだ友達でいられるんだから。もう覚悟はできてるって、言ったよね」

あの子は、ただ「はい」と返事をしただけだった。
カチャ、という音と同時に、あの子のポケットから小さなナイフが出てきた。
そのままあの子は言った。

「こんなもの、持ったの初めてですよ。お母さんに止められましたが、無視をして家を飛び出してきたのです。一日だけ反抗期ですね....穂乃果、心の準備ができたら言ってくださいね。私はあなたをこのまま離しませんから」
「痛くて、暴れちゃうかも」
「それでも離しません。すべて終わるまで、私はあなたを離しません。何があってもです」

暴れちゃうだなんて言ったけど、きっと想像もできない痛さなんだ。
準備は出来てるつもりなのに、胸の鼓動が早くなって収まらない。
それはあの子も同じみたいで、ナイフを持つ手が震えて、地面と擦れ、カチャカチャとずっと音が鳴っている。


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