過去ログ - 穂乃果「これからも友達で」【ラブライブss】
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8:名無しで叶える物語(たけのこ饅頭)[saga]
2016/12/14(水) 21:37:08.31 ID:vRldcILQ0


残り5日。
体になにかある訳でもなく、むしろピンピンしている。
本当に穂乃果は死んでしまうのかな、と思ってしまう。
来なくなったあの子の事は、既に諦めようとしていた。
でも、その日の夕暮れ時の事だった。
鉄のドアが勢いよく開かれた。

「穂乃果っ....はぁ、んぐ、はぁ....はぁ、はぁ」

息を切らして薄暗いこの部屋に入ってきたのは、髪の長いあの女の子だった。
脚がガクガクと震え、そのまま女の子座りになるように座り込み、胸に手を当てて呼吸を整えている。
穂乃果は急な出来事に何も言えず、会いに来てくれたことの嬉しさに、それ以外のすべての気持ちが吹き飛んでしまった。

「何があったの」

それでもとっさに出た言葉だった。
精神的に不安定だった穂乃果は、少しそっけなかったと思う。
でもあの子は、やっぱり笑顔で答える。

「わたっ....しは....あなたを....穂乃果を死なせたりしません!」

いつも真面目なのに、遂におかしなことを言い始めた。
穂乃果の目をじっと見つめるあの子の目の周りは、少し赤くなっていた。
この五日間、あの子は何処でどんな気持ちで過ごしていたのか、何となく察することが出来た。

「私、ずっと調べていたんです。大切なお友達だから、あなたを見捨てるような事は絶対にできそうにないんです....私、初めてかもしれませんが、わがままを言わせてください。穂乃果を、救わせてください。私はこれからもお友達でいたい。一緒に生きていきたいんです!」

そっか、髪の長いあの女の子は、おばかさんだった。
穂乃果自身が運命だと受け止め、ただ死を待っているだけの生き物だったのに、何もしない穂乃果を責めることもなく、あの子は穂乃果を救おうと精一杯だった。
これからもお友達―一緒に生きていきたい。
その言葉を聞いて、頬に温かい、初めての感覚が流れていく。
何故か辺りがぼやけて、キラキラと光る視界。
抑えても抑えきれない変な声が恥ずかしい。
見たことしかなかった気持ち―これが―泣くってことなんだ。
穂乃果の心の奥には、密かに「生きたい」気持ちがあったんだと思う。
本当は穂乃果だって、大好きで大嫌いなあの子と一緒に、もっと楽しい思い出を作りたかったから。

「穂乃果....あなたが涙を流したところ、初めて見ました」
「うるしゃい....」

うまく喋れない。
クスクスと笑うあの子のお陰で、ほんの少しの希望が生まれた。
だってあの子は、何か確信があって来てくれたんだ。
でも、穂乃果は別に、最後の日まで一緒に過ごすだけでもいいのに。
これじゃあ幸せ者だよ。
余命がわかっているのに、どうしてこんなに幸せを感じたんだろう。

「"海未ちゃん"....ありがどっ....」
「穂乃果、私の名前....」

初めて呼んだあの子の名前。
名前を呼んでしまえば、本当に人間との繋がりが切れなくなってしまいそうで、いつも口に出すことは無かった。
その初めてを、使ってしまった。
とっくのとうに恋に落ちてしまっていたであろうこの心に、正直になってしまったから。
あの子と、穂乃果の本当の気持ちを信じると、決めたから。


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