2:名無しNIPPER[saga]
2016/12/21(水) 17:33:42.86 ID:Mbdc4egm0
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時間を理由に断ってた手前、予定が決まってモタついてられません。
光さんに導かれるまま行動を開始し、荷物を背負って移動しました。
途中で更衣室に立ち寄ってジャージに着替え、それから向かうはレッスンスタジオ。
誰もいない貸し切りの部屋に入って、彼女はシャツを翻らせて一回りしました。
「さぁて、みっちり特訓をするぞ!」
「ちょっとだけ、って話は何処に行ったんですか……?」
そんなお小言に聞く耳持たずで、てきぱき支度を進めてます。
ほんの五分も経たないうちに、拘束台――という設定のマットと跳び箱――が設置されて、その上に軟質の縄とハサミが置かれました。
「この縄も撮影に使うんですよね」
「拷問シーンだから、まぁね。キツめに結んでも傷がつかない優れ物だから、じゃあ、よろしく!」
そう言って光さんはくるりと振り向き、後ろに組んだ手を向けてきました。
「もしこんがらがったら、そこの鋏で切っていいから」
「わかりました。それと、結び方は先ほど検索を済ませました。安心してくださっていいですよ」
「おおっ、やっぱり君は頼りになるなぁ!」
会話を二三繰り返しながら、彼女の手首に縄を這わせます。
子供っぽかったり活動的だったり。そんな彼女の印象に反して、腕の肌は思いの外焼けてません。
むしろ破けそうなほど白く滑らかで、しなやかな手首がいっそう女の子らしいほど。
性や男女の有り様なんかに悩まされず、悩む理由もなく育ってきたように鷹揚な彼女とのギャップが大きくて、ほんの少しだけ衝撃です。
当たり前だけど、光さんだって女の子で、そんな彼女に手荒な演技練習をすることを改めて自覚して、手先の能率が悪くなってきました。
「橘ちゃん」
そんな私を責めたりはせずに、ゆっくりと、今度は諭すように話し始めました。
「アタシ、なるだけ本格的に練習したくて君を頼ったんだ。だから、難しいかもしれないけど、なるべく手加減しないで欲しい。……大丈夫そう?」
「……やれます。大丈夫です」
いまさら生じたわずかな逡巡が、穏やかな説得にからめ取られます。
ためらわず手首と親指を固定し、光さんを後ろ手に拘束しました。
「痛かったり、緩いところはありませんか?」
「ん、どれ、んしょ、んっ! ……うん、きっちり結ばれてるな。ただ……」
「どこか擦れますか?」
「……いや、なんか、悪いことしてるみたいで、急に照れくさくなってきて……」
そう言って光さんは、頬を桜色にしてはにかみました。
「今更ですよ……次、脚を結びますね」
ジャージの上からでも引き締まってるとわかる脚をなぞり、踝の周りを見定めます。
両脚が痛くならないよう適度に密着させ、それから縄で結びました。
「次は……えっと、猿轡とか?」
「? そんなのは台本に無かったはずだけど」
言われて持ってきた台本を開くと、確かに口の拘束は指示されてません。
冷静に考えてみれば、そもそもセリフを読み上げるのだから、唇の封印は許されないでしょう。
なのに、彼女を縛り付けるという目先のことに囚われて……そんな自分が気恥ずかしくなって、思わず顔が熱くなります。
「ふふ、橘ちゃんは本格派だな」
一切の自由を失っているはずの彼女が、クスクスと奔放にほほえみました。
「わ、笑わないでくださいっ! ……こほん、じゃあ、始めます」
そう言いながら光さんを台に寄っかからせ、鞭を掴んで台本を読み上げます。
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