過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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◆N7KRije7Xs
[sage saga]
2016/12/28(水) 19:43:01.68 ID:HiFRyoCx0
ラグレイ「ぐああっ!」
もろに衝撃を受けてしまった男は堪え切れずに耳を塞いで硬直する。その隙を見逃すはずもなく醜い怪人は涎を垂らしながら舌を伸ばし男を襲う。
マリベル「あ バカっ!」
魔物が動く前に気付いた少女は耳鳴りに耐えながら疾風のごとく駆け出し、その勢いに任せて男を弾き飛ばす。
ラグレイ「ぬおっ!?」
吹き飛ばされた男は訳が分からず地面に転がったが、やがて振り向くと自分の身代わりになって締め上げられる少女の姿が目に入った。
ラグレイ「マリベルどのっ!」
マリベル「っ! ぐうう…!」
強い圧力に軋む体に力を籠め、少女は必死に折られまいと抵抗していた。歯を食いしばり、か弱い腕に魔力を籠めて拘束を緩めようともがく。
しかし獲物を捕らえた本人は狡猾に眼をぐにゃりと歪ませさらに力を籠める。
ラグレイ「いまっ 今助け…!」
マリベル「く…うううう… がはっ…!」
転げた体を起こし立ち上がろうとする男を待ち、尚も力を緩めずに堪えていた少女だったが、遂に力の拮抗が崩れたのか、血を吐き出し苦しそうに悶え始めた。
ラグレイ「ぬ…ぬおおっ ……!?」
なんとか立ち上がり、男は剣を構えて走り出そうとする。
しかし。
*「エヒャアアアア!」
次の瞬間、振り向いた男の目に飛び込んできたのは、舌を切断され情けない悲鳴を上げてもだえる井戸の亡霊だった。
アルス「ベホマ。」
再び少女の方に視線を向けると男の前には少年が立っていた。咳き込み座る少女に向けて回復呪文をかけると少年はゆっくりと立ち上がる。
その全身に返り血を浴び、真っ赤に顔を濡らして魔物を見据える姿は正に“鬼神”のそれだった。
アルス「…………………。」
ラグレイ「あ アルスどの……。」
アルス「…ラグレイさん マリベルを頼みます。」
ラグレイ「は はひっ!」
少年の気迫に押され、男は思わず鼻水を垂らして気の抜けた返事をしてしまう。
*「ゲ… へェひゃひゃひゃ…。」
深手を負って尚も器用に笑い声を上げながら、“それ”は少年に向かって辺りに転がっていた石を投げつける。
アルス「…………………。」
その石がいくつぶつかろうとも少年はびくともせず、真っすぐ、ただひたすら真っすぐに井戸の中心に向かって歩んでいく。
*「げ…ひ…ひぃ…!」
その異様なまでの威圧に、恐れを知らないはずの亡霊もたまらず首を引っ込め逃げ出そうとする。
しかしその体はちっとも奥に降りて行かない。
何事かと上を見上げた時には既に体は浮き上がり、少年の眼とびったりと合ってしまっていた。
*「へ…へっ…へっ…。」
先ほどまでの愉悦そうな表情はどこへ行ってしまったのか、その白黒の瞳を文字通り白黒させて恐怖の感情を体現していた。
アルス「やあ。あのコの体は 柔らかかったかい?」
アルス「どんな 気分だったかな。動けない 女の子を 締め上げて もてあそんでさ。」
*「ひゅ…ヒュー ヒュー…。」
アルス「…………………。」
アルス「さようなら だ。」
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