過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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19: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2016/12/24(土) 00:00:27.50 ID:8lPBK+pa0
アルス「…………………。」

少年はまだ船首で見張りをしていた。

まだ遠くに見える南の大灯台の灯りを見つめ、少年は伸びてきた黒髪を後ろで束ねて潮風になびかせている。

ゆらゆらと揺れる灯台の光は、少年の中に様々な想いを沸き上がらせていく。これまでの旅のこと、父親に認められたこと、自分のなすべきこと、この漁にかける思い、そして先ほど見せた少女の曇り顔のこと。

“そんなことで あの娘を幸せに できるのか?”

父親の言葉が今になって頭の中に響く。

自分には決心がなかったのだ。確かに自分は世界を救った。だがそれは仲間の力があってこそのことだと少年はわかっていた。いくら英雄ともてはやされようが今の自分は漁師としてはひよっこに過ぎないのだ。そんな自分が少女の幸せを約束してやれる保証はない。それに父親はああいうが、実際のところ少女が自分をどう思っているのか直接聞いたことなど一度もない。どこにも確証はないのだ。

そんな思いが少年の心を、思いをぶつけることを、踏みとどまらせていた。

アルス「ふう……。」

そして詰まった思考を一度洗い流そうと、少年が溜息をついた時だった。





“ギィ”





アルス「……マリベル?」

木の軋む音に振り替えるとそこには少女が立っていた。

マリベル「まだ 起きてたのね。」

少女が歩みながら話しかける。

アルス「うん。 交代まで まだ 時間があるからね。」

マリベル「そう……。」

そう言って少女は少年の隣に立つ。

アルス「…………………。」
アルス「どう? 初めて 漁に きてみて。」

マリベル「どうって まだ 何にもしてないじゃない。 それに はじめては あなたも でしょ。」
マリベル「でも… そうね。こうして 乗せてもらえたのも もう あたしたち こどもじゃないからなんだって そういう気分になるわ。」

船縁に肘をかけ、少女は彼方を見つめる。

アルス「もう こどもじゃない か…。」
アルス「ねえ マリベル。 今回の漁についてきたのは 何か わけがあるんじゃないの?」

少年は顔だけを彼女の方に向けて尋ねる。

マリベル「…べつに。」
マリベル「今まで さんざん ボロ船や マール・デ・ドラゴンみたいな 大きな船には 乗ってきたけど やっぱり 網元の娘として 自分ちの船くらい 乗っておかないとね。」
マリベル「…………………。」
マリベル「それだけのことよ。」

遠方の灯りを見つめたまま少女は言った。

すると少年は上半身だけ動かし、少し思案するように彼女の横顔を見据えた。

アルス「…………………。」



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