過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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35: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2016/12/24(土) 11:30:06.41 ID:8lPBK+pa0
ボルカノ「…来たか。」

少年の予想通り船長は甲板で一人、長旅に備え体を伸ばしながら息子を待っていた。

アルス「遅くなって ごめん 父さん。」

ボルカノ「いいってことよ。それよりも アルス。その布は いったい なんだ? コスタール王への 献上品か?」

アルス「ああ これ? ちょっと待ってて。」

そう言うと少年は肩に担いでいた布を広げ、その上に座って手招きをする。

ボルカノ「なんだ アルス。絨毯の上に 乗って どうするんだ?」

父はいまいち少年の真意を理解できずにいたが、やがて少年と向き合うにように絨毯に腰を下ろす。

父があぐらをかいたのを見て少年は少しだけ口角を上げる。

アルス「じっと していてね。」

そう呟くと少年は意識を集中するかのように足元を見つめる。

ボルカノ「……!」

刹那、少年の父親は周りの景色が沈んでいくかのような錯覚を覚える。
何事かと辺りを見やれば景色が沈んだのではなく、自らが浮上したいることに気付いた。

ボルカノ「こいつは たまげた! 絨毯が 浮いているじゃねえか!」

アルス「魔法のじゅうたん。これで ひとっとびさ!」

そう言って少年がホビット族の暮らす洞窟へと絨毯を旋回させようとした、まさにその時だった。




*「待って!!」




不意に呼び止められて少年が振り向くと、そこにはいつものように髪を頭巾で覆った少女が小さなつづらを持って立っていた。

アルス「マリベル!」

マリベル「あたしも 行くわっ!」

そう宣言すると少女は自分の足元に小さなつむじ風を起こし、漁師の親子が座る絨毯へと飛び乗った。

マリベル「あんただけじゃ ボルカノおじさまが 心配だから あたしが ついて行ってあげるわ。」

アルス「でも…。」

少年は困った顔で父親を見る。当の本人は息子と少女を交互に見つめる。少年の顔とは対照的に少女の表情は真剣そのものだった。

ボルカノ「…………………。」
ボルカノ「わっはっはっ! それもそうですな。では ご一緒して もらうと しましょうか!」

マリベル「ボルカノおじさま!」

アルス「父さん!」

ボルカノ「それともなんだ お前は 男二人の方が いいか? それはそれで 別に 文句は 言わないけどよ。」

マリベル「アルス……。」

そう呟くと少女は少年の顔を見上げ、服の裾を掴む。
その手はどこかすがるような、哀願するようなそれで、幾多の困難をその手で切り開いてきたとは思えないほど弱弱しく感じられた。

アルス「…………………。」

父親の手前抵抗はあったが、彼にしてみれば彼女を拒む理由などどこにもなかった。
むしろ彼女と過ごせる時間が増えることへの喜びが増し、無意識のうちに少女の手を上から包み込むように握っていた。

アルス「わかった。一緒に 行こう。」

マリベル「……うん。」

ボルカノ「…決まりだな。」

そうしてアミット号の船長は目の前で繰り広げられている光景にあっけに取られている漁師に呼びかけ、“コック長によろしく”と伝えて少年に向き直る。

アルス「それじゃ そろそろ 行こうか。しっかりつかまって!」

そう言うと少年は今度こそ空飛ぶ不思議な絨毯をコスタール王の住まう“城”へと向けてゆっくりと加速しながら走らせるのだった。


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