過去ログ - 若林智香「幸せの順番」 -SS速報VIP

過去ログ - 若林智香「幸せの順番」

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44: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:42:41.52 ID:sctM3UwS0
　「Ｐさん」

　「少しでいいので、アタシの手を握っていてくれませんか？」

45: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:43:42.46 ID:sctM3UwS0
　壊れものに触れるように優しく握ると、応えるように彼女も握り返してきた。

　「智香」

　今一度声をかけると、彼女と目が合った。

以下略

46: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:44:35.25 ID:sctM3UwS0
　「失敗したって、誰も怒ったりなんかしないさ」

　「へこんだ時は、俺が慰めてやる」

　いつかの俺達と比べると、立場というか構図が変わっている。

以下略

47: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:45:11.07 ID:sctM3UwS0
　「ライブ、やれそうか？」

　「任せてください！」

　「全力で、楽しめそうか？」

以下略

48: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:46:44.69 ID:sctM3UwS0
　舞台袖に辿り着いて、後は文字通り開演を待つばかりになった。

　ここより先に進めるのは、アイドルだけ。

　「Ｐさん」

以下略

49: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:47:45.98 ID:sctM3UwS0
　開演のアナウンスが始まる。

　袖に立ちながら、会場のボルテージの高まりを感じる。

以下略

50: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:49:29.17 ID:sctM3UwS0
　照明の落ちたままのステージに、人影が現れる。

　跳ねるような足取りで、中央まで突き進む。

　一斉にステージライトが点灯し、間を置かず一曲目のイントロが鳴り渡る。

以下略

51: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:50:40.69 ID:sctM3UwS0
　アンコールを含めてスケジュール上の曲目を終え、彼女が舞台裏に戻ってきた時、俺は嬉しくて仕方がなかった。

　アイドルとは斯くあるべし、と胸を張って言えるようなライブを彼女は見事にやってのけたのだ。

　全身全霊で歌い躍り尽くした彼女は、しかし息を荒げながらも俺の元に戻ってきてくれた。

以下略

52: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:51:33.71 ID:sctM3UwS0
　ライブは、始まったかと思えばすぐに終わってしまい、それから関係者に挨拶をして回り、今日はそのまま解散になった。

　社用車に乗って彼女の暮らす女子寮の駐車場に辿り着いたのは、午前一時に差し掛かろうかという頃合いだった。

53: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:52:08.44 ID:sctM3UwS0
　「Ｐさん」

　「Ｐさんは、もしもアタシが、今ここで、」

　「アイドルを辞めようかなあって言ったら、どう思いますか？」

以下略

54: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:52:49.09 ID:sctM3UwS0
　「……俺は、止めるしかない」

　「だって、お前にはたくさんのファンがいる」

　「理由にもよるけど、彼らを裏切る真似だけはしちゃいけない」

以下略

55: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:53:35.41 ID:sctM3UwS0
　「何か嫌なことでもあったのか？」

　「違います、そういうことでもなくって、」

以下略

56: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:54:11.06 ID:sctM3UwS0
　「正直言うと、辞めてほしくなんかない」

　「確かに若林智香というアイドルは、ファンにとっても、もちろん俺にとっても、大切で必要な存在だ」

　「だけど、お前にとってもそれは大切なものなんだ、必要なものなんだ」

以下略

57: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:54:57.51 ID:sctM3UwS0
　「……Ｐさん」

　「なんだ？」

　「Ｐさんが終わった後にありがとうって言ってくれた時がアタシ、一番幸せ者だなあって実感しました」

以下略

58: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:56:15.38 ID:sctM3UwS0
　「なあ、智香」

　「なんですか？」

　「最高のライブを、ありがとうな」

以下略

59: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:56:44.31 ID:sctM3UwS0
　そう言ってドアを開けようとすると、彼女がこちらに身を乗り出してきた。

　心なしか、頬が紅い。

　「最後に一つ、いいですか？」

以下略

60: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:57:22.45 ID:sctM3UwS0
　「いつかアタシがアイドルを辞めても、Ｐさんはずっと、アタシのそばにいてくれますか？」

61: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/12/24(土) 02:58:34.02 ID:sctM3UwS0
　以上になります。
　拙い出来ですが、読んでいただけると喜びます。
　ありがとうございました。

62:名無しNIPPER[sage]
2016/12/24(土) 03:47:56.11 ID:f1qt8Ew5o
乙乙

63:名無しNIPPER[sage]
2016/12/24(土) 08:45:52.57 ID:RHHi6uSgo
乙！

64:名無しNIPPER[sage]
2016/12/26(月) 17:23:50.09 ID:9fOs0RoO0
乙
やっぱり智香ちゃんが一番いいな

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