30:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/28(水) 22:14:09.73 ID:Hhhi1HzW0
照れた真姫ちゃんとじゃれ合う凛ちゃんを横目に、私は交換してもらった唐揚げを一口だけ齧り、味わってみました。
──少しも味がしない。
どうやらおにぎりの作り方を失敗した訳じゃなくて、私の味覚に問題があるようです。
全く味のしない唐揚げを喉まで押し込んで、お茶を一口。
原因はわかりませんが、おそらくはこの眼に映る線が関係しているんだと思います。
会話を続ける二人に刻まれた線が、いつもより濃いように感じる。
不意に眼の奥が灼けるような痛みに襲われ、両手で眼を庇いました。
花陽「──っ!」
ようやく線が眼に馴染んできたと思っていたのに。
大きな勘違いでした。
慣れるなんてとんでもない。
あれは死そのものなんだと、ちゃんと理解したつもりになっていたんです。
おかしくて嗤ってしまいそう。
眼を庇っていた両手をゆっくりと下ろし、まじまじと観察しました。
この眼に映る現実がどれだけ異常であやふやなのか、線にナイフを這わせたときに感じたはず──
命を直接この手で切り落とす感触が、まだ残ってる。
幸い、二人は会話に夢中でこちらの異変に気がついていません。
平然を装いながら、二人の方に視線を向ける。
真姫ちゃんの膝の上に置かれていた、豪華で大きな弁当箱がやけに眼を引きます。
そこには、視えてはいけないものがあったんです。
二人と同じように、弁当箱にもうっすらと線が視えたとき──
私は本気でこの両眼を潰してしまいたいと思いました。
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