過去ログ - 終わらない物語が嫌いな僕と余命が短い女の子の話
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/07(土) 21:26:21.47 ID:6hLdimli0
 終わらない物語が嫌いだ。
 終わらない物語、と述べたが要するに未完結の物語が苦手なのだ。完結しているのであれば、巻数が多かったり、分厚いハードカバーであったりしても大して問題ではない。
 僕が嫌なのは、続きを待つことの焦れったさであったり、主人公が何をしたいのかわからないままダラダラと続いているものであったり、はたまた一人で行けばいい旅をわざわざ仲間を増やして主人公の目的の達成を引き延ばしているところである。


3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/07(土) 21:27:43.16 ID:6hLdimli0
長くなる予定ですので時間があるときにでもどうぞ


4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/07(土) 21:30:25.81 ID:6hLdimli0
 まあ、そんな物語でも、完結しているのであれば嫌悪感を抱くことはないわけだが。
 待つことが嫌だ、というのはまだ少し可愛げがあると思う。週間の漫画雑誌を読み終わって、次の物語を催促する子どものようだから。だけど生憎ながら、僕はもうそんな年ではなく立派な大学生であった。


5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/07(土) 21:33:18.72 ID:6hLdimli0
ただ、ダラダラと続いてるだの主人公の目的がなんだだの、それを含めて物語の個性である訳でそこを嫌がるのは自分でもどうかと思うが、それは僕が元来物語を読むのに向いていないという天からのお告げかもしれない。



6: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/07(土) 21:38:42.28 ID:6hLdimli0
 大学の講義もそこそこ、僕は母の入院する病院へ行った。母は生まれつき体が弱く入院することが多々あるため、病院に行くことは少し慣れていた。お見舞いの花や、母が退屈しないようにいくつかの本も買い、『今から病院行く』と母に連絡し、病院へ向かった。



7: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/07(土) 21:39:43.07 ID:6hLdimli0
『朝野香子』・『藍野芽衣』と並んだプレートを確認してから、母のいる病室にコンコン、とノックをしてしばらく待った。母は『藍野芽衣』さんという女性と同室であるため、ノックしてすぐドアを開けるという無遠慮な行為は憚られた。少しして「はーい、薫かな?」と聞かれ、「うん、開けても良い?」と確認した後、ドアを横に引いた。


8: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/07(土) 21:44:41.07 ID:6hLdimli0
久しぶりに見た母のそばには、いくつかの本とこちらをじっと見つめる見知らぬ女の子がいた。中学生か高校生のように見えるが、もしや彼女が藍野さんなのだろうか。いつも藍野さんは留守にしていたので、外見を想像したことがなかった。初めて会う彼女と目を合わせるのが気まずくて、僕はあまり目を合わせないようにして母のもとへいった。


9:名無しNIPPER[sage]
2017/01/07(土) 21:44:45.79 ID:9ysW3hiO0
期待


10: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/07(土) 21:46:37.91 ID:6hLdimli0
「いつも来てくれてありがとうね。大学は大丈夫なの?」と母に聞かれた。
「うん、大丈夫だよ」と言って僕はちらりと目線を彼女に向けた。ショートヘアーの黒髪に病的なほど色の白い肌。体がとても細いが、彼女は美少女といってもいい外見をしていた。
 目線を向けた僕に気づいたのか、母は僕に彼女のことを紹介した。


11: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/07(土) 21:48:30.35 ID:6hLdimli0
「同室の藍野芽衣ちゃん。本が好きみたいで、薫が持ってきた本も少し貸してあげているの。えっと、15歳だったかしら」と彼女に少し目線を動かした。
 「・・・はい。15歳です。高校には行っていないも同然なので、高校生とは言えないですけど」
 おそらく彼女は何かしらの病気で入院しているのだろう。少なくとも、怪我で数ヶ月入院している、という風には見えなかった。


12: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/07(土) 21:52:03.85 ID:6hLdimli0
「いつも、あの、朝野さんの本を貸してもらって読んでます。どれも面白くて・・・潔癖性とかだったらごめんなさい」と彼女はたどたどしく僕に言った。
 「いや、全然大丈夫だよ。少女漫画とかはないけど、少しだったら漫画も持っているし、今度持って来ようか?」と彼女に聞いた。きっと、病院にずっといて退屈なんだろうと僕は彼女になんとなく同情してしまったからだ。」
 すると彼女は無表情から一変、花が綻ぶようにじんわりと表情を緩ませ、「お願いします」と微笑んだ。



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