過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5―
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955: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2018/02/15(木) 18:40:11.64 ID:YSodv2Da0
「ん、これって……」

 思い出したように写し絵を取り出して見比べる。フォレオの姿とそこに並べられている物、柄は違うけど多分同じタイプの着物だ。この頃、暗夜の市場にも少なからず出回るようになったけど、大量に扱っているお店はないからと食い入るようにあたしは眺める。
 写し絵の姿と置いてあるものを交互に見ていると、段々こういったものを着てみたいという欲が出てくる。そう考えた時には、入り口を潜って中に入っていた。
 店内は外の活気に比べるととても静かで、別世界に入ってきたような錯覚に陥るほどだ。少しばかりキョロキョロと視線を巡らせていると、ようやく奥から声が聞こえてくる。

「いらっしゃいませー、ごめんなさいねぇ。おまたせしちゃって……あら? 見たところ暗夜の人みたいね。何をお探しかしら?」
「え、えっと、そのちょっと興味があって覗きに来ただけで」
「そう、見て行くだけでもいいから、目を通していってちょうだい」

 独特の音色の店員さんはそう言うと、並んでいる浴衣の中の数着へとあたしを誘導する。あたしに合いそうな色というのは確かにある、そしてちゃっかりともう着付けに必要なものまで集め始めていた。どうやら、一着は着ないといけないみたいだ。
 そろそろ夏場も近づいているからか、生地の厚みが少し薄い気がした。確かにこの写し絵のフォレオが着ている物は夏にはちょっと熱いよねと思いつつ、商品に視線を向ける。
 赤い生地の物、薄いピンクの生地、そして青……。
 父さんのイメージの色だからかもしれないけど、自然と青に手が伸びる。どちらかというと男性向けの色な気がして、隣にある水色はまだ女の子向けかなと、手を伸ばす。

「うーん、これかな……」

 そうして手に取って振り返ると、もう着付けの準備を終えていた店員さんと目が合った。
 パパッと脱いで胸を布で撒かれる。少しだけきつくしたのは、着物はこの方が見栄えがいいからだそうだ。着物の着付けは生れて初めてのことだから、言われるままに袖を通して言われた通りに動く。気づいた頃には着付けも後半に差し掛かっていた。

「一人で着るのは大変ですね、これ」
「そうね、馴れてない人だと腰巻みたいになったりするから。特に暗夜の人は袖を通しても、その後はボロボロって感じね」
「店員さんはとってもうまいですね。それにとっても美人さんです。そうだ、この後お茶でもどうです?」

 もうフォレオを追いかけるのは難しそうだと判断して、あたしはこの女の人とお茶をして暗夜に戻ろうと考えていた。
 相手はあたしの提案に少しだけきょとんとして、だけどすぐに砕けたようににっこりと笑った。


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