19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 15:56:56.77 ID:3OYwXlIW0
織野が描いてきた絵に宿る並々ならぬ迫力の根源は、彼の想いそのものだった。
「壊子さん……もし迷惑でないのなら、今より近い場所で僕と一緒に絵を描きませんか。壊子さんに手伝ってもらえれば、きっと、凄く素敵な絵が描けると思うんです」
お互いの意思を汲み取るよう見つめ合った後、織野の真剣な眼差しから逃れるよう、くるりと回って背を向ける。
「あ、あれ?壊子さん、あのー返事を貰ってないんですが」
「──芸術は爆発だ」
「はい?」
言っている意味がわからないと嘆く織野を無視して、私は続けた。
「織野はビルの爆破映像を見たことがあるか?」
「そりゃあ一度くらいはテレビで見たことがありますけど、しっかり観察したことはないっていうか……」
「人類が培ってきた英知を用い、長い時間をかけてようやく作り上げた鉄の塔が崩壊する瞬間に見せる輝きは、他にはない美しさを秘めてる」
織野に背を向けたまま、夕焼け空を抱きしめるよう、大きく両手を広げる。
「すいません、ちょっと僕にもわかるように説明してもらえませんか」
颯爽と振り返り、答えた。
「できるといいな」
「えっ?」
「爆発するぐらい凄い作品」
意味を理解し、喜々とした表情で頷く織野。ああ、素晴らしい笑顔だ。
今この場で織野と作り上げた関係をぶち壊しにしたら、一体どれだけの快楽を得られるだろう。
込み上げてくる衝動を喉元でぐっと堪え、薄く微笑む。
最高の壊れ方を目指すには、最高の関係を作らなければならない。
いつか壊れる瞬間を夢見て、私は作り続ける。
壊すに足りる、最高の作品を。
終
22Res/24.03 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。