過去ログ - 「壊したがり」
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18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 15:54:14.45 ID:3OYwXlIW0
 決死の覚悟を抱いて臨んだというのに、一番肝心なところで待ったをかけられた。
 これでどうでもいいことを宣い始めでもしてみろ、舌を引っこ抜いてやる。

「壊子さん、これってつまり……そういうことですよね」
「君の考えている通りだ。あとは煮るなり焼くなり好きにしろ……覚悟はできてる」

 緊張の為だろうか、喉が無性に乾く。答えを聞かずにこのまま踵を返して退散してしまいたい。

「いえ待ってほしいっていうのは変な意味じゃなくて、ええっと、なんていうか、その……」
「先輩だからといって気を遣う必要はない。むしろここで時間くれなどと言うのなら、私は君を軽蔑するぞ」
「違うんですってば!急に止めたのは、壊子さんからじゃなくて僕から伝えたかったからなんです!」

 次に口を半開きにするのはどうやら私の役目だったらしい。

「実は最近、江ノ島のやつにも同じようなことを言われて、迷ってたんです」

 やはり、あの子も宣言通りに行動したのだな。その結果がどうであれ、彼女の方が数段上の勇者であることは火を見るより明らかだが。

「……君達なら、良好な関係を築くのはそう難しくないだろうに」
「はい。やかましいところはあるけど……あいつとは中学時代からの付き合いだったから、思うところはあったんです。いっそ、一度一緒になればはっきりするんじゃないかなんて考えたりもしました。でもそれじゃ駄目だって気づいたら、もう受け入れられなかった」

 そこにどんな葛藤があったのか知ることができなくても、想像することはできた。
 双方による痛みの分け合い、か。

「元々絵が嫌いだったから、描くだけでも嫌だった。でも壊子さんに絵を教わって、嫌いを好きに変えることができた。褒められる度にもっと絵を描こう、もっと良いものを作ろうって思うことができた」
「……織野」

 絵が嫌いな人間が筆を取ろうするほどに、想いは強く、重かったのだろう。
 今、合点がいった。



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