過去ログ - あなたの物語を。トエル 『氷菓』
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112: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:46:46.47 ID:fiJYedV+0
 俺と千反田は陣出南のバス停へと歩を進めることにした。

話したいことがあるんだ、という俺の掛けた言葉への、千反田の提案である。


以下略



113: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:47:21.56 ID:fiJYedV+0
「まず最初に断っておく。お前が知りたがっていたことに関して、俺はひとつの仮設を立てはしたが、

それが事実であるかどうか、それについてはお前の父親や母親に直接尋ねでもしない限りは確かめようがないだろう。

そして、お前がそれを確かめようとしたところで両親が本当のことを語ってくれるとは俺には思えない」
以下略



114: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:48:05.87 ID:fiJYedV+0
 千反田は口を開かない。

自転車のチェーンの音が、二人の歩んできた軌跡に印を残してくれているようだった。



115: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:48:39.71 ID:fiJYedV+0
「はい」千反田が重い口を開く。

「わたしは、折木さんを信じます。

それに、折木さん……わたしには、千反田えるにはあなたが伝えてくれるんですよね?」
以下略



116: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:49:15.84 ID:fiJYedV+0
 自らを落ち着けるために、大きく息をついた。

さらに、今度は己を鼓するために一度だけ大きく深呼吸をする。


117: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:50:20.30 ID:fiJYedV+0
「結論から先に述べるぞ。お前の父親が、千反田、お前に跡をつがなくていいと告げるきっかけになったのは、

あの二枚あるうちの右に置かれていた絵、女の子の絵を見たからなんだ」

「絵ですか!? 母の描いた、あの」
以下略



118: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:51:05.68 ID:fiJYedV+0
「お前の母親が俺に教えてくれたんだが、絵画というのには、言葉にならない、言葉では伝えられない物語が秘められているそうなんだ。

その物語は鑑賞者の捉えようによって、色々な解釈が与えられていく。お前の父親は、お前の母親が描いた物語を見た。

そこから自分なりの解釈を加え、結論を導き出した。それが今回の結果に繋がったと俺は考える」
以下略



119: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:51:33.56 ID:fiJYedV+0
「分かりません。どのような解釈の結果、父はわたしに自由に生きろと告げる気持ちになったのか」



120: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:51:59.02 ID:fiJYedV+0
「千反田……お前のお母さんだが、きっと画家になりたかったんじゃないか? 

お前が湯に浸かっている最中に、色々と絵について話をしてくれたんだ。

あれは、絵を描くことに対してそれなりの心構えをもった人にしか語ることのできない内容だったと俺には思えた。


121: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:53:03.98 ID:fiJYedV+0
>>120
訂正

「千反田……お前の母親だが、きっと画家になりたかったんじゃないか? 

以下略



122: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:53:36.19 ID:fiJYedV+0
それに、俺は何か物を創ることが好きなわけではないから、考えたことはないんだが、

例えば小説を書くのが好きな人、漫画を描くことを趣味としている人、絵を大学にまでいって勉強した人なんてのは、

誰しもが一度は、それを生業に生計を立ててみたいと願ったことがあるんじゃないだろうか」
以下略



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