過去ログ - あなたの物語を。トエル 『氷菓』
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118: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:51:05.68 ID:fiJYedV+0
「お前の母親が俺に教えてくれたんだが、絵画というのには、言葉にならない、言葉では伝えられない物語が秘められているそうなんだ。

その物語は鑑賞者の捉えようによって、色々な解釈が与えられていく。お前の父親は、お前の母親が描いた物語を見た。

そこから自分なりの解釈を加え、結論を導き出した。それが今回の結果に繋がったと俺は考える」
以下略



119: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:51:33.56 ID:fiJYedV+0
「分かりません。どのような解釈の結果、父はわたしに自由に生きろと告げる気持ちになったのか」



120: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:51:59.02 ID:fiJYedV+0
「千反田……お前のお母さんだが、きっと画家になりたかったんじゃないか? 

お前が湯に浸かっている最中に、色々と絵について話をしてくれたんだ。

あれは、絵を描くことに対してそれなりの心構えをもった人にしか語ることのできない内容だったと俺には思えた。


121: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:53:03.98 ID:fiJYedV+0
>>120
訂正

「千反田……お前の母親だが、きっと画家になりたかったんじゃないか? 

以下略



122: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:53:36.19 ID:fiJYedV+0
それに、俺は何か物を創ることが好きなわけではないから、考えたことはないんだが、

例えば小説を書くのが好きな人、漫画を描くことを趣味としている人、絵を大学にまでいって勉強した人なんてのは、

誰しもが一度は、それを生業に生計を立ててみたいと願ったことがあるんじゃないだろうか」
以下略



123: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:54:15.38 ID:fiJYedV+0
「そうかも……しれません」

 千反田は考えを纏めようとしているのだろうか、足元ばかりをじっと見つめている。



124: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:54:50.33 ID:fiJYedV+0
「外国の街並みを描いた作品があっただろ? あの一枚について俺はお前の母親に尋ねたんだ。

まるで実際に見てきたようだけれど、実のところはどうなのか、と。

それに対してお前の母親は事情があって実際には渡航はできなかったと教えてくれたよ。


125: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:55:18.28 ID:fiJYedV+0
生で街の空気に触れていれば、自分のこの作品はもっと生き生きとしたものになっていたはずだと、

ちょっとだけ口惜しそうだった。そしてこの事情というのは、お前の母親が絵を止めることを決断する原因にもなったはずなんだ。

千反田、お前の母親は元々は陣出の人間ではなかったんじゃないか?」
以下略



126: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:56:18.78 ID:fiJYedV+0
「はい。母は神山市内から千反田家へ嫁いできた人間です……折木さん、ひょっとして……母は千反田の家のせいで、

自分の夢を諦めなければならなかったのでしょうか?」

 この辺りまで話が進めば、いくら察しの悪い千反田であろうと気づくことになると予想はできていた。
以下略



127: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:56:56.16 ID:fiJYedV+0
「俺には当然分からない。ひょっとすれば、お前でさえ知らない苦労があったのかもしれん。

名家と呼ばれる家へ嫁いでくるということ、右も左も分からないままに陣出の顔役を支える者としての責任を課せられ、

周囲が千反田家に求める事柄をこなしていかなければならない重圧。
以下略



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