過去ログ - あなたの物語を。トエル 『氷菓』
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70: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:05:47.36 ID:fiJYedV+0
「なあ千反田。お前の母親は昔は随分と真剣に絵を描いていたりしたのか?」

「はっきりとした学校名は忘れましたが、

美術大学へ通っていたというお話を随分前にされていたような記憶があります」
以下略



71: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:07:09.16 ID:fiJYedV+0
「折木くん」突然視界が覆われた。

「人様にじっと鑑賞してもらえるほど、立派な作品じゃないと考えているの」

 されるがままに、髪の毛をゴシゴシと拭かれる。
以下略



72: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:07:46.47 ID:fiJYedV+0
「える。ついでにお湯を沸かしてきたの。

身体を温めるぐらいでいいから浸かってきなさい。

折木くんもどうかしら?」
以下略



73: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:16:45.54 ID:fiJYedV+0
「いえ、ですが」

 千反田が俺と母親を交互に眺める。

「俺のことを気にしているなら大丈夫だ。
以下略



74: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:17:43.24 ID:fiJYedV+0
 なぜ千反田が笑ったのか皆目検討がつかない俺は、

頬を撫でたりしつつ、顔に何かがついてないかを確かめてみる。

「折木くん。頭よ頭」
以下略



75: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:18:39.38 ID:fiJYedV+0
 千反田の母親が臙脂色の盆を手に戻ってきた。

盆には茶を淹れた湯呑みと茶菓子、それに約束通り手鏡と客用らしき櫛が載せられている。

まず手鏡と櫛を手に取り、やたらめったらにうねり、立ち上がっている髪の毛の始末に取り掛かった。
以下略



76: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:19:23.40 ID:fiJYedV+0
 今朝方ぶりの格闘を終え、どうにか及第点までもっていくことができたと自らに言い聞かせる。

礼を述べ、千反田の母親に手鏡と櫛を返して茶を啜る。

千反田の母親は、ごめんなさいと手を合わせ、一口サイズのモナカを頬張り始めた。
以下略



77: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:20:17.63 ID:fiJYedV+0
千反田の母親というからには、お家柄、もっと厳粛な人物を想像していたからだ。

俺が娘と同い年の子供だというのも態度の軟化に多少なりとも寄与しているといえなくはないが、

しかしこの人の根底には千反田とは毛色を異にする人懐っこさがあり、そして何よりも家柄というものを意識したことのない者、
以下略



78: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:20:56.20 ID:fiJYedV+0
「ひとつ聞いてもいいかな?」

 千反田の母親が茶を啜り、首を傾げて俺に尋ねる。

「そんなにしゃちほこばらなくてもいいのよ。別に取って食べようとしているわけじゃないの。
以下略



79: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 20:21:59.13 ID:fiJYedV+0
 予期せぬ願い出に、俺が少なからず戸惑わなかったといえば嘘になる。

問いかけ自体はごくありふれたものだった。子を育てる親ならば、誰しもが子の友人にこのように尋ね、その答えを聞いてみたいのではないだろうか。

では、どうしてそこまで理解が及びながら、俺はその質問に答えあぐねてしまっているのか。
以下略



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