38: ◆GWARj2QOL2[saga]
2017/01/12(木) 21:18:02.76 ID:gex3pyg2O
「…」
手を伸ばしたが、あまりにも弱々しかった為に気づいてはもらえなかった。
里奈は恐らく病院の調理場に向かったのだろうか。
「…」
誰もいないこの世界では、最早あれはダメ、これはダメという事などは言っていられない。
他人の物に手を出すなど、普段の彼女達ならば絶対にしないことだが、背に腹は変えられない。
「…」
しかし、李衣菜が気にしているのは、それではない。
自分の看病の為に無理をし、自身の信条さえも破る里奈の姿に対し、ただただ、申し訳ないという、悲痛。
その身を犠牲にしてまで助けてもらう価値が、今の自分にあるのだろうか。
寝たきりの、静かにしか話せない自分に、そこまでされる価値があるのだろうか、と。
「…情けないなぁ…」
里奈を傷つけさせまいと誓ったはずが、ここまで追い込んでしまうという結果になった。
「…はぁ…」
ため息は幸せを逃す。
分かってはいても、つかずにはいられなかった。
「…」
その上、頭の中とは裏腹に、鳴り続ける、自身の胃袋。
恐らくこれを聴いて里奈は調理場にすっ飛んでいったのだろうと、余計に恥ずかしさを感じる。
だが、ここで不貞腐れて寝ていたところで、何も始まる訳でもない。
第一、里奈にまた心配をかけてしまう。
「…」
まず、お互いが元気になること。
その為に、李衣菜は里奈が戻ってくる間、力が湧かないながらも表情筋に鞭を打ち、必死に笑顔を作り出していた。
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