37: ◆GWARj2QOL2[saga]
2017/01/12(木) 21:17:03.34 ID:gex3pyg2O
「…良かったぁ…良かったよぅ…」
自分が起きたことでまた泣き始めた、彼女。
普段のメイクも取れ、多少は違うものの、藤本里奈に間違いなかった。
「…本当、ありがとね…」
「良いのぉ…アタシももっと早く来てあげられなくてごめんねぇ…」
彼女は、衰弱しきった李衣菜を担ぎ、近くの病院まで運んでいた。
しかしそこにもやはり人はおらず、致し方なく病院にあった道具で李衣菜に応急処置を施した。
しかしその程度で治るようなものではないということは百も承知であった。
だが、自分に出来ることは何でもしようと、一晩中李衣菜を看病し続けていたのだ。
泣きじゃくりながらも、必死に李衣菜の手当てを続け、ついには自分の目にクマを作る程にまでなってしまっていた。
つまり、夢だと思ったあれは、夢などではない。
この身で体験した、現実。
「私…何が何だか、分からなくてさ…」
しかし里奈のおかげか、何とか一命は取り留めた。
「…」
だがそれでも、絶対安静には変わりない。
「だりなちゃん。何か欲しいものある?」
「え?」
「何でも良いよ。持ってくるから」
自身の身体よりも、目の前のケガ人を優先する。
その優しさのせいで、既に彼女も幾分か調子が悪そうではあるが。
「…なら、里奈ちゃんがぐっすり寝てくれたら良いかな…」
「そんなの良いよ!アタシ全然元気だもん!」
そう言って、笑顔を作る。
だが、その笑顔は到底笑顔とは呼べない代物。
自身のプロデューサーが見たら、無理矢理にでも仮眠室に連れていくレベルのものだ。
「…里奈ちゃんの身体が壊れる方が、嫌だよ」
「元気元気!ほら、ね?」
心配させまいと、必死に取り繕う。
その姿が、今の李衣菜には一番嫌だった。
「…えっと…」
「あ!じゃあお肉!お肉食べよ!すぐ作るから!」
「あ…」
「待っててね!すぐ戻るから!」
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