40: ◆GWARj2QOL2[saga]
2017/01/12(木) 21:19:38.63 ID:gex3pyg2O
「美味しい?だりなちゃん」
「うん。おかげで力が湧いてきたよ」
「そんなすぐ治らないよ!ちゃんと寝てなきゃ!」
「んぐ…」
里奈が戻ってくる頃には幾ばくか冷静さを取り戻した。
彼女は今の自分が一番食べやすいだろうスープを作って持ってきた。
それを老人に与えるかのようにスプーンで掬い、李衣菜の口に運ぶ。
一口一口、ゆっくりと噛み締め、味わう。
血肉を求める己の身体が、美味い、と。もっと欲しい、と。
身体の奥底から訴え、口を自動的に開けさせる。
傷の痛みもいつしか和らぎ、ようやく少しの安心を手にすることが出来た。
「ご馳走様でした」
「エヘヘ…」
食えば、後は安静にするだけ。
今は一刻も早く、傷を治さなければならない。
「何かあったら言ってね?ずっとここにいるから」
里奈はそう言って、ベッドの近くの丸椅子に腰掛ける。
そっちこそ、休んではくれないかという台詞は、言わなかった。
堂々巡りになるだろうということが、分かっていたからだ。
「…ね」
「ん?」
だから、こうするのが一番なのだろう。
「…寒いし、一緒に寝ない?」
「…」
「お互い、早く元気にならなきゃ」
「…ん!」
この世界の今の気温は、恐らく20度を遥かに超えているだろう。
つまり、里奈を思いやった、李衣菜の優しい嘘だということだ。
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