過去ログ - 二宮飛鳥「セカイは１つの」 -SS速報VIP

過去ログ - 二宮飛鳥「セカイは１つの」

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19: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 02:41:51.04 ID:YYeDwO4N0
形にならない心の叫びが渦を巻く。吐き出したくて、吐き出したくて。でも、もうボクはそんな立場じゃなくて。

なにより心を痛めたのは、あのセカイに連れ出してくれた彼ーーープロデューサーがいなくなったことだった。

彼が「１年前」にここから連れ出したから、ボクは輝けた。ボクは心中を吐露しながら理解ってくれる人が増えていった。

20: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 02:42:20.01 ID:YYeDwO4N0
「まぁいきなりこんなストーカーじみたことされていきなり信じろなんてほうが無茶だと思うけど・・・どう？社長と掛け合って好待遇に扱ってもいいよ？」

ボクは困惑していた。今までがなかったことになってしまって、スカウトされたかつての居場所に急いで来たら、再びスカウトされることになるとはなんの因果だろうか。

「昨日」までの彼のおかげでボクはあのセカイに立てた。しかしそんな事実は消え失せて、そこにまた別の手が差し出された。

21: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 05:43:46.10 ID:YYeDwO4N0
「無かったことになったセカイ」で積んだ経験は決して無駄ではなかったようで、新人向けレッスンプログラムを完璧にこなしたボクは期待の新人として注目されるようになった。

それが直接的な原因となっていたのかは知るところではないが、すぐにでもユニットを組ませるという話が持ち上がった。

ユニット相手は、趣味欄に「失踪」なんて書くほど自由奔放が服を着たような存在である天才化学娘、一ノ瀬志希。

22: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 05:44:14.34 ID:YYeDwO4N0
あるＬＩＶＥを控えた前日のレッスンで、彼女は練習をおわらせるなりふらっと部屋を出ていった。

お得意の失踪かと思い、トレーナーに謝罪を入れつつボクは後を追った。

失踪の文字通りどこへ行くでもなく、目的はないようでそれは放浪ではないのかと内心でツッコんだ。

23: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 05:44:51.95 ID:YYeDwO4N0
「・・・海は、果てしないな」

「果てはあるよ。今は飛行機っていう文明の利器があるし？その気になったらばびゅーんっとあっという間に飛び越えちゃうよ」

「そういうことを・・・まぁいい。目的があってここに来たわけじゃないんだろう？」

24: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 05:45:19.18 ID:YYeDwO4N0

「うん、でるよ。なんたってDemension-3の初ライブだし？一度の実験もしないまま観察をやめるだなんてありえないしー？」

「そうか。なら、いいんだ」

25: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/03(金) 05:46:01.14 ID:YYeDwO4N0
「何処から来たかなんて、ボクは平凡な街で生まれて此処にきた、ただの１４歳に過ぎないさ。起源を知ったところで、今という情報へは終息しえない。違うかい？」

だからそれっぽい言葉を吐いてごまかした。志希はというと不満足そうにしていた。

「・・・ま、いっか。誰にも知られたくないコトくらい、あるよね。それならそれでいーや」

26:名無しNIPPER[sage]
2017/02/04(土) 13:50:51.80 ID:lk1i18o0o
期待

27: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:01:31.51 ID:WEZT7hRo0
それからというものの、ボクは何となく志希という人間が掴めた気がしていた。

日々移ろう彼女は真面目とはいえないが挑むべきと感じたことへの努力は惜しまない。

そこは「現」プロデューサーも理解していたようで、慌てながらもボクたちのことは信頼していた。

28: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:02:01.68 ID:WEZT7hRo0
そうしてＬＩＶＥや雑誌の仕事に忙殺されていると、あっという間に年の瀬は過ぎ、１月末となっていた。

そして来た新たな仕事。

「バレンタインデーＬＩＶＥ、か」

29: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:02:41.41 ID:WEZT7hRo0

ぎぃと音を立てて事務所の入り口ドアが開く。この一年間、ボクらに振り回された、しかし舞台の用意は完璧だったプロデューサだ。

「あ、お疲れ飛鳥。机の上においてた資料、目を通してもらえた？」

30: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:03:21.60 ID:WEZT7hRo0
ボクの答えを受け取ったプロデューサーは満足そうにしていた。そして口角がさらに上がったと思うと、深呼吸のあとにもったいぶってこう言った。

「さて！飛鳥にはもう1つ重要な仕事があるんだ！なんだと思う？」

バレンタインデーＬＩＶＥを越えるような仕事、だろうか。大きな合同フェスへの参加だろうか。あるいは、

31: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:03:52.34 ID:WEZT7hRo0

「悔しいなって。一年前に飛鳥に出会ったときから、この子は只者じゃないなって思ってた。
　けどなんだろ、その輝きを、私は十分にプロデュースできてなかったような気がしてさ。
　もっと飛鳥にはふさわしいプロデューサーがいたのかもって」

32: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:04:21.25 ID:WEZT7hRo0
それから数日は、デモＣＤを繰り返し聞いて覚えることに専念していた。

「共鳴世界の存在論（オントロジー）」。ボクがここにいると叫ぶボクの曲。

おおむね、いやひょっとしたら公になることなく消えて行ってしまうかもしれない曲を、体にしみつくまでリピートさせつづけた。

33: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:04:46.06 ID:WEZT7hRo0
「飛鳥ちゃんはっけ～ん。どう？残り３０分の中２ライフ楽しんでる？」

背にした戸の方から声が聞こえる。振り返らずともわかる。志希だ。

「・・・なんだい志希？ついに１４歳じゃなくなるボクのことを冷やかしにきたのかい？」

34: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:05:18.25 ID:WEZT7hRo0

簡潔にまとめたつもりの全てを話し終えると、机に置いた時計は日のまわる８分前を指していた。

「・・・時がさかのぼるなんていささか非科学的で滑稽な話だと思うけど、きっとキミの世界はそうなんだろうね」

35: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:05:45.43 ID:WEZT7hRo0

「さて、そろそろ運命の時間だ。他になにかあるかい？」

「あるよ。たくさん。けど時間がないから１つだけ」

36: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:06:12.29 ID:WEZT7hRo0
セカイの歯車は逆回転していたのか正回転していたのか。どちらにせよ、ギギギといった音が聞こえた、気がした。

37: ◆9CUtNS6CZQ[saga]
2017/02/07(火) 09:10:29.45 ID:WEZT7hRo0
以上です。

誕生日ssのつもりで書き始めたのはいいがこんなに日が立ってしまったので
とりあえずでも終わらせた方がいいと思い終わらせました。

38:名無しNIPPER[sage]
2017/02/07(火) 11:52:59.23 ID:aZeqAPgOo
えっ、続きは？

39:名無しNIPPER[sage]
2017/02/07(火) 12:42:38.37 ID:Oj1rM45Q0
続きが欲しいです

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