145:名無しNIPPER[saga]
2017/02/10(金) 17:32:39.50 ID:kE3bTgvP0
「双葉が犯人だと思っているのか?」
無理だ。双葉の自宅を知らないが、おそらく事務所から距離があるだろう。
事務所に来るだけでも面倒臭がる双葉が、何の利益にもならない行為のためにその寸暇を惜しむだろうか。ありえない。
それに……動機がない。上から数えた方が早い成績の人間がわざわざこんな大人数相手に嫌がらせをするのは不自然だろう。
「……それはないんじゃないかな。彼女は考えづらい」
「そうだね。杏には絶対無理。やろうとも思わないだろうね……だから」
渋谷の口から発せられたのは。
「プロデューサー。私たちは、あんたがこの事件の真犯人だと思ってる」
俺が犯人だ、という疑いだった。
「……は?」
「プロデューサーが犯人。私たちはそう思ってるよ」
「いや、嘘だろ?」
「嘘じゃないよ。でも、正直私も信じたくない」
思いもよらぬ展開に冷や汗が吹き出る。
同時に、俺を陥れた真犯人に対する憤りが俄かに湧き出て来た。
「でもね……プロデューサーしかありえないんだ」
「何故だ」
「プロデューサーが連休を取った日は誰も針を入れられてないんだ」
そんな。だからって。
「外回りしてた時も出なかったよ」
「事務所内で部署から出てる時もでした」
「それに、針が出はじめたのもあんたがここに来てからなんだよ」
渋谷の隣に歩み出るのは本田と島村。渋谷とユニットを組む、この事務所トップクラスのアイドルだ。
本田たちが前に出たのを皮切りに、アイドルたちが次々と俺ににじり寄る。
悲哀と困惑と憤怒、不信。
どうして。
どうして、こんなことに。
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