過去ログ - 千川ちひろ「Where is my green door ?」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:10:06.46 ID:U9T8Y7Al0
アイドルマスターシンデレラガールズより、千川ちひろさんのお話です

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:10:38.82 ID:U9T8Y7Al0
 緑のドアをくぐったことがありますか?

 私は一度だけくぐったことがあります。

 そのドアはなんの変哲もない普通のドアでした。見た目だけは。
以下略



3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:11:11.51 ID:U9T8Y7Al0


 忙しい日々を送っていたある日の事です。仕事がひと段落して、退社するまでの休憩がてら事務所でプロデューサーさんと一緒にコーヒーを飲んでいた時の事でした。

「いやぁ……さすがに今月は忙しかったですね」
以下略



4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:11:41.75 ID:U9T8Y7Al0
 コーヒーもすっかり飲み干して、そろそろ帰りましょうかと声をかけようとしていた時です。

「あの、ちひろさん……」

 プロデューサーさんに名前を呼ばれたんです。
以下略



5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:12:27.03 ID:U9T8Y7Al0
「……ま、またまた。冗談はやめてくださいね」

 動揺しているのを悟られないようにしながら、平静を保って言葉を返します。声が少し上ずっていたりしたのは気のせいだと思いたいです。

「冗談じゃないです。俺は本気でちひろさんが好きなんです」
以下略



6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:13:15.31 ID:U9T8Y7Al0


 着替えを済ませ、プロデューサーさんと鉢合わないように慎重に慎重に更衣室から脱出した私は速足で駅まで向かいました。

 その間、考えているのは先ほどのプロデューサーさんからの告白。
以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:13:47.02 ID:U9T8Y7Al0
 ……ただ、お風呂に入って冷静になってみると、私はプロデューサーさんにお返事をしても良いのかが分からなくなりました。

 だって、プロデューサーさんに好意を抱いているアイドルはたくさん居ます。もしかしたらアイドル全員と言っても良いかもしれません。

 ……もちろん、私もその……好き……なんですけど。
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:14:16.80 ID:U9T8Y7Al0


「おはようございまーす……」

 私が目の腫れをなんとかして、そっと事務所に入った時です。居ないといいなぁ、なんて思っていたのがいけなかったのでしょう。
以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:14:46.80 ID:U9T8Y7Al0
 その後はしばらく会話と言う会話もなく、キーボードを叩く無機質な音だけが響いていました。

 あの時は本当に時間の進みが遅くて、たかだか10分くらいが1時間にも感じられました。

「あ、そろそろ時間なんで行ってきますね」
以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:15:21.61 ID:U9T8Y7Al0


「はぁ……つ、疲れた……」

 その日はほんとうに散々でした。いつもならしないようなミスばっかりして、アイドルの娘達からも「ちひろさん……大丈夫?」って何度聞かれた事やら。
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:16:00.25 ID:U9T8Y7Al0
「お、お疲れ様です……。遅くまで大変でしたね」

 朝よりは平静さを取り戻せているようで、なんとか見苦しくはない受け答えが出来たと思います。

「えっと……その……」
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:16:41.18 ID:U9T8Y7Al0
「なので、昨日の事は無かったことにして、お互いいつも通りに戻りましょう」

「あ……はい……」

 無かったことに、という言葉をプロデューサーさんの口から聞いて、ものすごく身勝手ですけど悲しい気持ちになりました。本当に身勝手な女ですよね。
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:17:17.32 ID:U9T8Y7Al0


 子供の頃の話です。外で遊んでいた私は、家への帰り道で「緑のドア」を見つけたんです。

 早く帰らないと怒られてしまうので、近道するために空き地を通り抜けたんです。そこに「緑のドア」はあったんです。
以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:17:52.39 ID:U9T8Y7Al0


「その後、私の帰りが遅いのを心配した両親に、空き地で倒れているところを発見されて、こっぴどく叱られたんです」

 一気に話し終えてからプロデューサーさんの方を向くと、案の定顔中に疑問符が浮いていました。
以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:18:22.81 ID:U9T8Y7Al0
 マグカップにコーヒーを淹れて、デスクに戻ると先ほどと同じ姿勢のままでプロデューサーさんは考え込んでいました。

「はい、コーヒーです」

「あ、ありがとうございます」
以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:19:11.77 ID:U9T8Y7Al0
「私とプロデューサーさんって昔に会ってますよね?」

 今更ながら気づいたんですが、この事務所で会う以前にプロデューサーさんと私は会った事があります。それも、多分この容姿に見覚えがあるのでここ数年くらいに。

「え……? んん……?」
以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:19:41.65 ID:U9T8Y7Al0
「っ……」

 その指輪を見た瞬間、私はあの「緑のドア」の先で見た光景を思い出しました。

 私は、「緑のドア」の先でプロデューサーさんと一緒になる光景を見ていたのです。
以下略



18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:20:12.42 ID:U9T8Y7Al0


 私が泣き明かしたあの夜、私はプロデューサーさんの告白を受け入れました。

 アイドルのみんなには悪いと思ったのですが、ずっと探していた幸せを見つけてしまった私はその幸せから目を背ける事は出来なかったのです。
以下略



19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:20:44.40 ID:U9T8Y7Al0
「じゃあ、行きましょうか」

 真っ白なタキシードに身を包んだプロデューサーさんが手を伸ばします。

「はい」
以下略



20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/05(日) 23:24:50.53 ID:U9T8Y7Al0
以上です。

タイトルはH.G.ウェルズの短編小説集「タイムマシン」の中の「塀についたドア」より拝借しました。
私はこの「Where is my green door ?」を知ったのは「スパイラル・アライヴ」と言う漫画でした。
元々スパイラルが大好きだったのもあって、ずっと頭のどこかに残っていたので、なんか形に出来ないかなーとログインボーナス画面のちひろさんを眺めていたら緑の事務服が目に入ったんです。
以下略



21:名無しNIPPER[sage]
2017/02/06(月) 00:45:08.99 ID:R29eUfr+o
おつおつ


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