過去ログ - ありすちゃんの胸の隙間を埋めたい
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17:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:15:22.31 ID:pXi1qM9no
 これがさくらや亜子であれば何の躊躇いもなく言えただろう。二人とは長年の付き合いであり、お互いに遠慮もない気心知れた幼なじみという関係である。
 しかしありすとはそうではない。いやいや仲が良くないというわけではない。 どちらかと言えばありすは慕ってくれているだろうという自信はあるし、自分も慕ってくれる年下の存在を可愛いと思っているし、嬉しく思っている。
 とは言え、やはり自分を純粋に慕ってくれている子に対してはできない。


18:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:15:52.42 ID:pXi1qM9no
「あの、どうかしましたか?」

「な、なんでもないよ。それよりちょっとだけ離れようか。ごめんね、少しタブレットが見えにくいから」

「あ──す、すみませんっ」
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:16:19.31 ID:pXi1qM9no
 しかしどう伝えるべきか。やはりオブラートに包んで言ってあげるべきだろう。
 自分の尊厳と評価というものを気にしているというものはもちろんあるけれども、そうでなくとも『ありすちゃん、胸が見えそうだよ』なんてことを直球で伝えようものならありすも羞恥に苛まれてしまうだろう。
 年の割に聡明で大人びた価値観を持つありすであれば『痴女と思われてしまった』などと思い込んで部屋から出てこられなくなる、なんてことも考えられる。


20:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:17:07.07 ID:pXi1qM9no
 ……このあたり、さくらであれば『えへへ』と笑ってごまかそうとするだけで終わるのだろうけれど。
 あの子はあの子で、少し危機感というものを一度しっかり亜子と共に教育しないといけないかしら。


21:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:17:35.26 ID:pXi1qM9no

「──泉さんはやっぱり凄いです。私も泉さんのような、情報処理に優れた人になりたいです」



22:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:18:13.51 ID:pXi1qM9no
 物凄く純粋な尊敬の言葉が胸に突き刺さる。
 まさかこんなに純粋に好意を持ってくれる子の目の前で自分は胸が見えそうだなんてことしか考えていないとは言えない。そんなことがバレた日にはありすにとって一生もののトラウマレベルだ。


23:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:18:40.08 ID:pXi1qM9no
「ふふ、私がありすちゃんの年の頃は電子機器もありすちゃんほど上手く扱えていなかったし、ありすちゃんなら私みたい、よりもずっと凄くなれるよ」

 私みたいに年下の女の子の胸が気になって仕方ない人間になってはいけない。
 いや、平時であれば気にしていないけれども。プロデューサーが余計なことを言って意識させたせいだけれども!


24:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:19:06.81 ID:pXi1qM9no
 ……しかし、どうしたものか。どう言ったものか。ありすちゃんの自尊心を傷つけずに、ありすちゃんの憧れを壊さずに、ありすちゃんにトラウマを残さないように胸が見えそうであるということを伝えるには、いったいどうすれば──

 ガチャりと、思考の迷路を打開をするように扉が開いた。


25:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:20:01.23 ID:pXi1qM9no
「あれ、ありすに泉の二人だけか。プロデューサーはいないの? いや、別にいいんだけどね、来週のスケジュール確認に来ただけだからまた後でも。……そうだありす、そのシャツ少し胸元が伸びちゃってるね」

「え? ああ、確かに少し伸びてしまっていますね……」

「とりあえず私の替えのカーディガンを貸してあげるから上に着ておいたほうがいいよ。サイズが合っていないとどうしても隙間から風が入って寒くなるから。風邪引いちゃうよ」
以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:20:27.04 ID:pXi1qM9no

「……いえ、なんでも」



27:名無しNIPPER[saga]
2017/02/06(月) 20:20:53.66 ID:pXi1qM9no
 ………まるで自然に、流れるように。
 自分が必死に苦悩してどうしたものかと考えていたことをあっさりと解決したこの先輩──渋谷凛さんのその手際のよさに、どっと疲れを感じるだけだった。


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