38: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:35:31.30 ID:BcSldTJc0
ソイツが行動を起こす、少し前。
私たちはカレーを食べ終えて、食器を洗い終えて、班ごとに歩いて部屋に戻っていた。
道中、東田が滝野を呼び止めて、何かを渡していた。
すぐに東田はどこかへ走って行ったので、私は滝野のそばに行って、何を受け取ったのか尋ねた。
「これ……さっき、東田君が拾ってくれた、って」
そう言いながら、滝野は少し遠慮がちにシャーペンを見せてきた。さっきなくしていたシャーペン。
私はそれを見て、忘れていた匂いを思い出した。
そしてすぐに忘れようとした。
幸い、服に炭の匂いが残っていたので、それで誤魔化すことはできたけど、間違いなく、あの匂いは、この間、におったモノと同じだった。
よかったね、と、私はなるべく明るい口調で言えるように努めて言って、駆け足でその場を離れた。
すぐ近くで、歩いていた未来人に出会う。
「真っ青だよ」
言われてはじめて、私は自分が息を止めていたことに気づいた。
あれ以上、認めたくなかったのだ。あの匂いが、滝野のシャーペンから、漂ってきた事。
そして予想していたことが当たるのが、怖かった。腑に落ちるのが恐ろしかった。
「なにか、隠してるね」
未来人は、見透かすように私の顔を覗き込んでくる。
「……別に」
私は、できる限り目をそらして、それから少し早足で林道を歩いた。
未来人も付いてくるかと思っていると、足音がしない。
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