過去ログ - 未来人「ここにいるよ」
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33: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:32:34.47 ID:BcSldTJc0

「なら、犯人はあえてクワを使ったのかな?」

 山田がそんなことを言うので、私たち3人は、首を傾げて山田の方を見た。

以下略



34: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:33:08.69 ID:BcSldTJc0

 中庭の事件から数週間後、私たちはバスに乗って、となりの県の孤島へ自然教室に向かった。

 あんな事件があってもやもやしてたとはいえ、しばらく時間も経っていたので、当日くらいまでには、私は案外、楽しみにしていた記憶がある。
 子供は切り替えが早い。
以下略



35: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:33:53.00 ID:BcSldTJc0

「なにしてるの」

 波とエンジンの音がよく響いていたので、少し声を張って私がそう言うと、未来人は振り返らないまま、

以下略



36: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:34:24.70 ID:BcSldTJc0

 初日の予定は、荷物を事務所に預けてから、班ごとに分かれて近くの林道でウォークラリーをして、それからカレー作りだった。

 孤島に着くと、その日が曇っていたせいかもしれないけど、思っていたよりも鬱蒼とした印象を受けた。1本1本の木が大きい。
 小さな山の集まりのような島だった。
以下略



37: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:34:57.77 ID:BcSldTJc0

 実を言うと、この時起こっていたことを、私はほとんど覚えていない。
 後から他の人に話を聞いてみると、実はこの時、ある人物が露骨に怪しい行動をしていたそうなのだけれど、私は周りに注意を向けていなかった。

 カレー作りは、4人班が2班づつ合同で行った。この時の班は未来人も同じだったので、班が決まった時は喜んだものだけど、
以下略



38: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:35:31.30 ID:BcSldTJc0

 ソイツが行動を起こす、少し前。

 私たちはカレーを食べ終えて、食器を洗い終えて、班ごとに歩いて部屋に戻っていた。

以下略



39: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:36:06.17 ID:BcSldTJc0

 気になって振り返ると、彼女は、林道の横道の奥を眺めて、立ち止まっていた。

「なにしてるの」

以下略



40: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:37:23.09 ID:BcSldTJc0

 それから2時間くらい後。

 私たちは風呂の時間という名のカラスの行水を終えて、寝る準備を整えていた。

以下略



41: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:38:58.38 ID:BcSldTJc0

 しばらく黙って歩く。耳に入るのは2人分の砂利を踏む音だけで、匂うのは薄紫だけ。
 明かりが届かないところまで来ると、東田は突然、私に話しかけてきた。

「滝野さんは賢いよね」
以下略



42: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:39:30.81 ID:BcSldTJc0

「猫は好き?」

 東田は立ち止まった。そして迷いなく、半身で振り返った。

以下略



43: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:41:57.06 ID:BcSldTJc0
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44: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:42:31.68 ID:BcSldTJc0

 逃げないと。

 混線した頭がやっと導き出した答えを、私は震える膝に頼み込んで、やっとのことで振り返ると、後ろから低い声で、

以下略



45: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:43:04.42 ID:BcSldTJc0

「キャンプ用のナイフでも、人って切れるのかなぁ? とりあえず、猫の肉は切れたから、たぶんいけると思うんだけど」

 子供が持つには刃渡が長すぎるナイフは、僅かに雲の隙間から漏れている月の光を、その身に独占するように、東田の左手の中で、過剰に輝いていた。

以下略



46: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:43:39.03 ID:BcSldTJc0

 私は涙を流した。よく思い出せないけど、目は閉じていたと思う。

「……はぁあ?」

以下略



47: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:44:13.48 ID:BcSldTJc0

 翌日と翌々日は、恐ろしいほどに、普通に過ぎていった。

 未来人も東田も、何事もなかったかのように自然教室を楽しんでいて、私は、気でも狂ったのか、それともあれは夢だったのか、本気で自分の心配をした。

以下略



48: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:44:53.19 ID:BcSldTJc0

「なにしてるの」

「なにもしてない」

以下略



49: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:45:48.24 ID:BcSldTJc0

「私は未来から来た」

 自称未来人の彼女は、私によくそう話していた。

以下略



50: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/12(日) 00:47:45.38 ID:BcSldTJc0
ひとまずおしまい。

読んでくださりありがとうございました。
またいつか続き書きます。


51:名無しNIPPER[sage]
2017/02/12(日) 00:54:39.44 ID:SWjPv3wV0
乙乙


52:名無しNIPPER[sage]
2017/02/12(日) 00:55:25.24 ID:SjEVCQTao

今回も良かった
続き待ってる


53:名無しNIPPER[sage]
2017/02/12(日) 07:20:41.07 ID:ljTTWLPjo

このシリーズ良いな


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