過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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163: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/03/03(金) 20:37:31.83 ID:cn/ymcwe0
そこからは自分でも驚くほど箸が進みました。
きんぴらごぼうはコリコリとした食感とほどよい味の濃さで、大根のおひたしは柔らかさのなかにシャキシャキとした感触が残り、卵焼きは甘さとニラの苦みが絶妙のバランスをつくっていました。

ただ少しばかし勢いよく食べすぎたようです。
喉がつまってしまって、慌てて横に置いていたペットボトルに手を伸ばそうとしたところ、湯気が上がるコップが差し出されました。


「お茶です。苦いけれど、体にとってもいいそうなんです」


どうやら手提げ袋の中に魔法瓶も入れてあったようです。
喉が詰まっているため目で彼女に礼を伝え、お茶を口にしました。

なるほど確かに苦いですが、仕事をしながらちびちびと口にしたくなるような味です。
熱さも冷ますことなく飲めて、それでいてぬるくないちょうどいい塩梅です。


「ふう……ごちそうさまでした」

「はい、お粗末様でした」


弁当は大人の男性である私が十分に満足できる量でしたが、あまりの美味しさと手料理の嬉しさに十分足らずで食べ終わりました。


「プロデューサーさんに美味しそうに食べてもらえて、とても嬉しいです」

「いえ、嬉しいのは私の方です」


ただ問題は、これからはこういったことは控えるように言わなければならないことです。
緒方さんの純真な善意を注意するのは、正直気が重い……重いのですが……


「お、おや?」

「プ、プロデューサーさん?」


手が重く、そして感覚が鈍くなり、ほんのりと熱を持ち始めました。
突然の事態に驚いているはずなのに、目は見開くどころかまぶたが下がり始めます。
まるで、冬の朝に布団から出ようともがいているかのような。


「プロデューサーさん」


そっと手をさしのばされます。
霞がかった頭は促されるままに、そのほっそりとした美しい手をつかんでしまいました。


「どうぞこちらに」


ゆっくりと手を引っ張られる。
導かれるがままに重い足を引きずりながら、閉じかかった目の代わりに天使のささやき声と御手を頼りに前へと進む。


「はい、ここに座ってください」


座っていいとわかった途端、何とか力を振り絞っていた両足が糸が切れたように崩れ、感触からソファとわかる場所に音を立てて沈みこんでしまいます。


「それじゃあ……あ、頭を、こっちに」


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