過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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262: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/03/11(土) 11:32:25.78 ID:23pDOjCz0
「奏さんのようにチャーミングに誘惑できればと……これまで何度も夢想しました」

「鷺沢さんは速水さんと仲が良かったですね。教えていただいては?」

「き、キスをおねだりする方法から始まってしまいまして……」

「速水さん……」


彼女らしいといえば彼女らしいのですが、鷺沢さんにそこから始めるのはハードルが高すぎます。


「何も慌てずに今のように本で知識を得たり、速水さんなど周りのアイドルを観察して少しずつ勉強するだけでも大丈夫だと思います。鷺沢さん、既に貴女はその佇まいだけで男が放っておけなくさせる魅力の持ち主なのですから」

「……放って、おかれているんですが」


鷺沢さんを励まそうとした言葉だったのですが、どういうわけかさらに落ち込ませてしまいました。
もしかすると鷺沢さんには気になる男性がいてその人に振り向いてほしい、ないしは構ってほしいと思われて勉強されているのでしょうか。

アイドルは恋愛禁止なので、せめて構ってほしいと願う程度であってほしいと思いつつ、慌てて別の方向から慰めます。


「な、何より鷺沢さんはまだお若いですから、自然と、そして急速に身につけることができます。私なんてもういい歳になるにも関わらず、ろくに女性の口説き方も知らないことと比べれば何の問題もありません」

「……では、プロデューサーさんが女性へのアプローチに慣れる練習を始めたという噂は本当なのですね」


噂話に耳を立てるイメージがあまりない鷺沢さんにまで伝わっているとは、いったいどんな伝わり方をしているのでしょうか。
私が女性に慣れようとすることに、そこまで話題性があるとは思えないのですが。


「あの……実は最近、大学で困ったことがありまして。聞いてもらってもいいでしょうか?」

「ええ、もちろんです」


相談事のようなので、鷺沢さんの隣に腰掛けます。


「構内を一人で歩いている時に、顔は知っていますが名前までは知らない男性に呼び止められたのです。中庭の方に誘われたのですが、講堂への移動中でしたし、何よりあまり親しくない男性と二人になるのが怖かったので……断ろうとしたのですが、うまく声が出なくて、首を横に振るぐらいしかできなかったんです」

「それで……その男性は諦めましたか」


嫌な予感がして先を促します。
その時のことを思い出したのか、鷺沢さんは顔を暗くしてうつむきます。


「その人は私から離れようとせず……身勝手な事を言い始め、ついには私の手首を握って……驚いたのに、それ以上に恐ろしくて、小さな悲鳴しかあげられなくて……運よく友人が気づいてくれたので助かったのですが、今考えただけでも身の毛がよだつ出来事でした」


私も大学に通っていたからわかりますが、学びの場であるにも関わらず己の欲望を満たすことしか考えない者が少数ですがいます。
そういう輩にとって鷺沢さんのように美しく、そして大人しい女性は格好の獲物なのでしょう。

爪が食い込む痛みに、知らぬ間に拳を握っていたことに気づきます。


「……鷺沢さんは●×大学に通っておられましたね?」

「は、はい」

「ご安心ください。346側から正式に抗議を行い、その男性に相応な処分が下されるよう圧力をかけます」


そんな男は大学のためにも退学が相応しいと思いますが、よくて停学、普通に考えれば呼び出して口頭注意で終わってしまうでしょう。
しかし何もせずに野放しにすれば次は何をしでかすかわかりません。

怒りを抱いていることを自覚しつつ、なんとか落ち着こうとそんなことを考えていると、鷺沢さんが慌てて止めました。


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