過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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◆SbXzuGhlwpak
[sage]
2017/03/11(土) 11:31:43.52 ID:23pDOjCz0
「そうですね……あの方は優しい人だから、きっとそう言ってくださるでしょう」
「……鷺沢さん?」
「え……?」
会話がどうにもかみ合っていないことに気がつき、まさかという思いから声のトーンがあがってしまいました。
声の調子が変わったからか、鷺沢さんは初めて本から顔を上げます。
「プロデューサーさん……え、もしかして私……そ、そんなっ」
どうやら本に夢中なあまり、目の前に私がいたことに気づいていなかったようです。
私への最初の問いはあくまで独り言で、その後の会話のようなものは夢うつつのまま行われたのでしょう。
鷺沢さんは顔を赤くして混乱されていますが、私の方も女性の独り言に相槌をうっていたわけでして、彼女に負けず劣らず混乱しています。
どうしたものかと思っていると、鷺沢さんがピタリと動きを止めました。
何事かと注視していると、そっと胸の前で猫のように両手を構え、
「が、がおー」
恥ずかしそうで今にも消え入りそうな、しかし耳からこぼすにはあまりにもったいない可愛らしい鳴き声をあげました。
「が……がおー」
どうしていいのか、どう反応すればいいのかわからず。
気づけば私も同じ言葉を口にしていました。
「……」
「……」
静寂が場を支配しました。
鷺沢さんは両手を構えたまま耳まで真っ赤に染め、私を上目遣いで見たまま硬直しています。
私はというとやや腰が引けた体勢で、やはり硬直しています。
何なのでしょうか、これはいったい。
傍から見れば美女と野獣が互いに面食らっている状態です。
「ち、違うんです」
ここで鷺沢さんが動かれました。
慌てて横に置いていた雑誌を手に取り、ページを探すのに手間取りはしましたが目的のものを見つけ、それを私に掲げます。
「今年の流行は小悪魔ファッション……小生意気に男を誘惑しちゃえ?」
「…あ……あの、あまり『ぐわっ』という感じだと大悪魔的かと思ったので……小悪魔的に小さくまとめてみたのですが……」
「ああ……なるほど」
てっきりライオンの物まねなのかと。
「その……恥ずかしい話なのですが、私はこれまで男の人に甘えたり、まして誘惑したことなど一度もありません。男の人を騙すという意味ではなくて、ここ、これからはそういったことも必要なのではと」
別に恥ずかしがることではないと思うのですが、鷺沢さんは何度も目をそらしては、その度に懸命に私に視線を戻します。
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