過去ログ - 一ノ瀬志希「フレちゃんは10着しか服を持たない」
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13: ◆Freege5emM[saga]
2017/02/13(月) 02:35:16.31 ID:bfxHdujzo
◇◇◇◇◇

目を開けると、耳障りな振動音がどこからか聞こえてきた。
あたしの携帯が鳴っていた。ディスプレイを見ると、いつの間にか日付が変わって次の朝だった。
振動音は着信で――相手はプロデューサーだった。あたしは携帯の電源をオフにしてまた目を閉じた。

今度はインターホンが鳴った。ピンポンピンポン。
あたしは黙殺した。ピンポンピンポン。ピンポンピンポン。ピンポンピンポーン。しつこいなぁ。

あたしは姿見の前に立った。格好は昨日フレちゃん家に押しかけたときのまま。
あたしは服のシワを軽く伸ばして、顔を洗って、髪を梳かした。
それからパウダーファウンデーションをさっと塗って、チークを乗せて、
マスカラをつけてルージュを引いてから、やかましい玄関へ向かった。

「はぁーい☆ アナタのはぁとにしゅがしゅがスウィーティ☆ しゅがーはぁとの参上だぞ☆」

玄関にはあたしのアイドルとしての同期、佐藤心さん(26)が立っていた。

「あ、はぁとさん。おはよう」
「おはようじゃねーよもう昼だよ! つーか、はぁとを待たせてメイクまでしてたな!?」
「パリジェンヌはどんな日だってナチュラルメイクぐらいするもん」
「はぁ? アンタ帰国子女だけど行ってた先はアメリカじゃなかったっけ」
「……どーでもいいじゃん。それより、はぁとさんはウチにナニか御用?」

はぁとさんは玄関のドアを無理やり開けようとして、無残にもドアチェーンに阻まれた。

「こら! 『ナニか御用?』じゃねーよ! アンタ今日仕事でしょうが。もう時間だよ!
 プロデューサーなんか失踪癖が再発したもんだと思って頭抱えてたぞ!
 それで片っ端から心当たりを回ることになって、なぜかはぁとまで駆り出されてここまで……」

ああ、そういえばそろそろクリスマスイベント準備にみんな動き出すんだっけ。

「……ご苦労様ですパイセン。コーヒーぐらい飲んでく?」
「パイセンじゃない! あと、はぁとは緑茶党だ☆」
「緑茶は無いかなぁ……」
「とにかく入れろ☆ はぁともいい加減疲れてきたから一休みしたいわ……」



あたしはフレンチプレスを使って濃い目のブラックコーヒーを淹れて、
リモージュ先生に注いではぁとさんに出した。

「お、おう、なんかニオイからして本格的なコーヒーだなぁ……はぁとがオトナだからって、
 こんな苦みばしった味をわざわざ淹れなくてもいいんだぞ☆」
「いや、あたしが今ザラザラするぐらい苦いのを飲みたい気分なの……」
「志希ちゃんの好みかよ!」

そんなことを言いつつはぁとさんは神妙な手つきでコーヒーを飲んでいた。
あたしもカフェインのおかげか、思考がクリアになってきた気がした。


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