1:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:24:03.96 ID:LGAxRdjco
※独自設定あり、キャラ崩れ注意
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:24:35.75 ID:LGAxRdjco
最近何だかおかしいんです、と緒方智絵里は喋りだした。小日向美穂が智絵里に相談を聞いてほしいと頼まれたのは定期レッスンが終わったところだった。
いつも控えめで抱え込みがちな智絵里に相談を頼まれたとあれば、断る理由なんてない。それでなくとも美穂という人間は頼ってもらったことに対して無下にするようなことは無いのだけれど。
悩める子羊を救うのは天使として当然であるということを鑑みるとやはり美穂は天使であるという証明であった。巷で話題の魔界天使ミホリールである。
3:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:25:02.32 ID:LGAxRdjco
おかしいんです、と言ってから目をキョロキョロと動かして言い淀みながら、言葉を逡巡している智絵里を見て美穂は静かに微笑みながら見守ることにした。
下手に言葉を引き出そうとするよりも待ってあげたほうがいい。無理に聞き出そうとしても智絵里を焦らせてしまうだけであり、それならば智絵里のペースで喋らせてあげることこそが正解だ。
暫くして、ようやく智絵里は美穂にまっすぐ視線を向けた。
4:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:25:29.57 ID:LGAxRdjco
「実は──翼が、黒ずんでいるんです」
5:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:25:56.47 ID:LGAxRdjco
…………………。
ん? んん?? んんん???
目を何度か擦る。何を言っているのか理解が及ぶよりも前に──いやもう本当にそれ以前の問題としてなんだかとても衝撃的な光景が広がっているような。
智絵里の背後に何かある、というか、背中から直接何か生えているような。なんとなく黒ずんでいるように見える白い翼のようなものが生えているような。
6:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:26:25.74 ID:LGAxRdjco
いや、いやいやいや。
そんなバカなことがあるはずない。人間に翼は生えていない。羽なんてない。
だいたい、智絵里はまだ翼が黒ずんでいるんです、と言っただけだ。何の翼がとは言っていない、自分に生えた翼だなんて言っていない。きっと小道具の翼が汚れてしまったとか、そういうあれで。
7:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:26:52.75 ID:LGAxRdjco
ぱたぱた。ぱたぱた。
8:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:27:19.32 ID:LGAxRdjco
…………………。
羽ばたいてるー!?
9:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:27:45.95 ID:LGAxRdjco
今目撃している光景がはたして現実なのか、もしかして全て夢だったりするんじゃないか。そういや今日はまだお昼寝していなかったし、こんなに良いお天気なのにお昼寝していないなんてそれこそ嘘みたいなお話だしきっと夢だそうだ。
つねり。
痛い。
つまり夢じゃなかった。
10:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:28:11.92 ID:LGAxRdjco
こうなってしまえばもう現実を受け入れなければならない。幸いにも辛く悲しいものではない、どちらかと言えば幸福なものかもしれない。
何せ美穂が今見ているものは──天使の翼、かもしれないのだから。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:28:38.85 ID:LGAxRdjco
「あの、私どうしたら……!」
「ごめん智絵里ちゃんちょっと待ってほしいかな」
「はい。……あ、わっかも少し黒ずんでる。拭いとかなくちゃ」
12:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:29:05.43 ID:LGAxRdjco
智絵里の頭の上に金色に光るわっかが突然何もない空間から出てきたけど今さら気にすることではない。頭の上からひょいと動かしてハンカチで拭いたら簡単に汚れが取れていってるけど気にすることではない。気にしちゃいけない。
これ以上は処理が追いつきません。
美穂は智絵里から目をそらして、心を落ち着けるために深呼吸をする。
吸ってー、吐いてー。
吸ってー、吐いてー。
13:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:29:37.12 ID:LGAxRdjco
「智絵里ちゃん。……えっと、その、翼が黒ずんでいるんだよね?」
「はいっ、そうなんです! 私、もしかしてこのままだと堕天しちゃうんじゃないかって不安で──」
蘭子ちゃん以外から堕天なんて言葉をまさか聞くとは思わなかった。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:30:42.29 ID:LGAxRdjco
「?」
智絵里はきょとんと首を傾げる。可愛い。いや違う、そうじゃない。
15:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:31:55.21 ID:LGAxRdjco
──じゃない!!
照れている場合じゃない!!
16:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:32:22.39 ID:LGAxRdjco
「あの、もしかして智絵里ちゃん……私が天使だと思ったから翼を?」
「はい。そういえば美穂ちゃんは翼、何枚ですか? 私は階級が低いので二枚ですけど、ミホリールちゃんならきっと十二翼の熾天使なんだろうなぁ」
「過大評価がこわい」
17:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:32:50.88 ID:LGAxRdjco
とにかく、誤解を伝えなければいけない。自分は天使ではないと。……智絵里が人間ではなく天使であることをいよいよもって認めないといけなくなるが。
まさか正体がバレたからにはその人は消さなければいけない、なんてことはないだろう。……ないよね?
「あの、智絵里ちゃん。凄く言いづらいことなんだけど……」
18:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:33:23.80 ID:LGAxRdjco
選択肢を選び損ねたかもしれない。
そもそも始まりであるところの智絵里から相談を受けたという時点で選択を既に失敗していたのかもしれないけれど。
いや、まだ希望は捨ててはいけない。
希望というものは捨てた時点でその人間にはやってこないもの、とまで言ってしまえばそれはさすがに過言でしかないけれども、とは言え希望をしないものに対して神はきっと微笑まないだろう。
志して目指すからこそ人の夢は叶うように、願うからこそ願い事は叶う。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:34:17.29 ID:LGAxRdjco
「ち、ちなみに残念なことってどんなことなのかな……?」
「……上司からのお叱りと始末書です」
残念なことになるのは智絵里だった。
20:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:34:43.59 ID:LGAxRdjco
さて、智絵里の始末書が決定してしまったところで話を再び元に戻すことにしよう。智絵里の翼が黒ずんでしまっている理由が何なのか、という話題に。
……まさか自分の人生の中で天使から翼が黒ずんでいるけれどどうしたらいいだろう、なんて相談を受ける日が来るとは美穂はこの日まで露ほどにも思っていなかったであろうが、人生とは往々にして思うようには進まないものである。
21:名無しNIPPER[saga]
2017/02/16(木) 23:35:10.19 ID:LGAxRdjco
とは言っても、そもそも翼が黒ずんでしまうシステム自体が美穂には理解の外であり、だから相談を受けたところでどうしようもないのかもしれないけれど。
しかし智絵里が困っているということは確かなのだろうし、人間である自分には理解できないかもしれないけれど、それでも何か力になれればとは思う。
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