過去ログ - モバP「拓海おまんこゴリラ」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/10(金) 17:28:24.59 ID:a5TNd00P0
階段の手すりはとてもつるつるとしていて、そこを掴んでしまっては、きっと永遠と滑り落ち続けるに違いないと、とっさの判断で尻餅をついてみたのだが、これがどうにも失敗だったようで、尾骶骨だとかいう骨を折ってしまった。
この尾骶骨骨折というやつはなんともやっかいな骨の折り方で、座れば痛いし、立っても痛い。おまけに寝ていても痛むときたもんだから、どうしようもない。上半身はぴんぴんと健康そのものであったので、仕事にでようと思っていたのであるが、上司から休めといわれたので、仕方なしにベッドに身体を預けている次第である。

休めといわれたので休んでみてはいるものの、なんとまあ退屈なこと。我が家のテレビは二ヶ月前からうんともすんともいわなくなって、買ったまま放っていた本は一昨日に読み終えて、携帯ゲーム機の類は持ち合わせていないし、くそったれ、暇というものがこれほど辛いことだとは。
枕元のスマートフォンがひっきりなしに鳴って、それもそのはず、事務所のアイドル達は皆一様に優しい娘であるので、確認するまでもなく我が身を心配するメールの報せなのだが、確認しないわけにもいかんので、一通一通をじっくりと時間をかけて読んでみた。それがいい暇つぶしになって、いや、暇つぶしという言い回しは失礼なのだけれども、上手いこと時間を消費することができた。

その中の一通に拓海からのものがあり、これを読んでみるに、仕事が終り次第、見舞いに行ってやる、とのことであった。エクスクラメーションマークの散りばめられた本文は、変に動揺せず、いつも通りの向井拓海であることを示しており、この胆の据わった娘に、また信頼が深まるのを感じていた。プロデューサーとしては、アイドルを家に上げる、というのは避けたいところなのだが、何を言ったところでアイツは来る。絶対に来るだろう。拓海にとって、仲間の苦しみは己の苦しみであり、アイツのいう仲間のカテゴリーには俺も含まれていて、自分を犠牲にして仲間のために尽くす、というのが暴走族時代から向井拓海の根幹に聳え立つ信条なのであった。というわけで、俺がどんなに来るな、といっても来るのである。
こういう時に面倒な記事でも書かれたら、それはもう面倒なことになってしまう。俺は顔見知りの週刊誌ライター数名に連絡を入れた。日ごろの“お付き合い”というものはとても重要である。一様に「次は書かせてくださいよ」と言い残し、面倒事は未然に回避されたのであった。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/10(金) 17:29:22.23 ID:a5TNd00P0

壁掛け時計に目をやると、二時をほんの少し過ぎたところで、確か拓海は三時までは少年誌のグラビア撮影であったはずである。来訪までには余裕があるので、受信メールには目を通し終えたし、さてとインターネットをちらほらと散策。
これもプロデュース業の一環であると、アイドル達の世評を見て回って、好評多数、悪評少数、といつも通りの景色が広がるばかりであったが、とあるSNSの某氏による「向井拓海はおまんこゴリラ」という一文が目に留まり、スクロールを止めざるを得なかった。
某氏の他の投稿を見るに、拓海に対しての投稿が比較的多く、そのどれもがとても好感的なものであった。つまるところ、この「向井拓海はおまんこゴリラ」とは某氏なりの冗談を交えた褒め言葉なのであろう。技量の凄さの度合いを「ゴリラ」という言葉で表現する手法が若者の間で流行っていると聞く。以前も、智絵里は太鼓ゴリラとの発言を見かけたし、比奈などは画力ゴリラだし、夏樹なんかはギターゴリラであるらしかった。
ようするに、この某氏の「おまんこゴリラ」とは「凄いおまんこ」を意味しているのだが、この人は拓海のなんなのであろうか。拓海のおまんこのなにを知っているのであろうか。適当な発言をしよってからに。


3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/10(金) 17:29:59.47 ID:a5TNd00P0

しかしまて。こうして憤っている俺も、拓海のおまんこの具合を知っているわけではないのだ。プロデューサーとアイドルの恋愛など(セックスに恋愛感情など必要ないのかもしれないが)言語道断であると、拓海のおまんこの具合など今まで考えもしなかったことだが、こうして見ると途端に意識してしまう。アイツのことならなんでも知っているつもりであったのに。落胆と言うと大げさであるが、落胆である。

そうこうしていると、玄関のチャイムが鳴った。そして、ノック数回。拓海だ。
ドアを開けてやろうと立ち上がるが、激痛でその場に倒れ、しかし鍵を開けてやらないとどうにもならないので、まるで芋虫のようだな、と思いながら玄関まで這っていった。鍵を回すと、ゆっくりとドアが開き、その隙間から怪訝そうな顔で拓海が覗いているのであった。
以下略



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