過去ログ - 渋谷凛「水風船のように」
1- 20
5:名無しNIPPER[saga]
2017/03/17(金) 12:25:33.77 ID:1HyDqIB70

 どうして奏だったんだろう? 

 私自身よくわかっていなかったけれど、初めて泊まった日に「寒かったでしょ?」と差し出されたホットチョコレートの味は覚えている。甘くて、暖まって、とても落ち着く味だった。

 一人暮らしの彼女の部屋はいやに物が少なくて、モノトーンのオーディオコンポ、柔らかいソファー、間接照明、テーブル、本棚、ベッド、大きなテレビ。たったこれだけだった。

 私たちがいつも暮らしているごちゃごちゃした世界から隔離されたみたいで、不思議と落ち着く。

 ただ、生活感の薄いこの部屋は、奏が実際に生きているという気配がしなくて寂しかった。
 世界から隔離されているのは部屋じゃなくて、奏なのかもしれないって。

 だから一カ月に一度は奏の家に泊まりにいった。存在を確かめるみたいに。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
27Res/14.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice