過去ログ - 中野有香「雨上がり、今日は朝から」
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17: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:50:29.05 ID:feup4BK40
「いえ、そういうわけではなくて……Pさんとはいつも仕事で忙しい中でしか会っていないので、ゆっくり話す時間が欲しかったのです」
「ゆっくり話す時間、か……それなら、わざわざランニングをすることはなかったんじゃないか? ほら、俺はおじさんだからもうクタクタ」
18: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:51:13.35 ID:feup4BK40
「ランニングにしたのは、たぶん恥ずかしかったからだと思います」
「何が?」
19: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:52:04.26 ID:feup4BK40
しばらくしてPさんが口を開いた。
「いつもはどこまで走ってるんだ?」
20: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:52:52.20 ID:feup4BK40
「あ、待ってください!」
「待たない! 待ったら負けるもん!」
21: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:53:38.69 ID:feup4BK40
Pさんが花壇の目前まで来て、もう追いつけないかな、と思ったところで突然Pさんが足を止め、うずくまった。
「どうしたんですか!?」
22: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:54:31.21 ID:feup4BK40
立ち上がれないPさんの脚を伸ばす。やはりいい筋肉が付いている。この筋肉をどこで付けたのか聞きたいところだが、それよりも先に聞かなくてはならないことがある。
「ちゃんと準備運動はしましたか?」
23: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:55:17.70 ID:feup4BK40
おじさんと言われたことと脚の痛みで半泣きになるPさんのうめき声を無視して、脚を伸ばす。
「無理してけがでもされたらあたしが困るので、ちゃんと体には気を遣ってくださいね」
24: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:56:25.76 ID:feup4BK40
「おーい、有香?」
「お、押忍! なんでしょうか!?」油断していた。
25: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:57:04.55 ID:feup4BK40
* * *
あたしとPさんは河川敷のさっき来た道を歩いて戻る。太陽も高く昇ってきて、ぽかぽかした春の陽気が心地良い。吹き抜ける風も暖かく、自然が全身で春の喜びを表現しているかのようだ。
26: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:58:06.34 ID:feup4BK40
「この蕾なんか、有香みたいだと思わないか?」
「どういうことですか?」
27: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:58:57.25 ID:feup4BK40
「ここの桜はもう少しすると満開になって、本当にきれいなんですよ。……あたしもあんな風にきれいな花を咲かせることができるのでしょうか」
「咲かせられるさ。そりゃもう、全身のいろんなところからぶわーっと花が咲くんだ」
28: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 21:59:45.11 ID:feup4BK40
「あー! そうだ! 忘れてた!」
「なんですか?」
29: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 22:00:41.86 ID:feup4BK40
思わぬサプライズに目が点になる。そういうところは変な気を遣うのが実にPさんらしい。
「あ、ありがとうございます……これは?」
30: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 22:01:38.06 ID:feup4BK40
「喜んでもらえて何よりだよ。あ、でも包装がくしゃくしゃだ。やっぱりジャージのポケットなんかに入れてくるんじゃなかったな……」
「そんなの気になりませんよ」
31: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 22:02:19.68 ID:feup4BK40
そう言うとPさんは再び走り出し、あたしも後を追う。Pさんはこういう時はすぐに調子が良くなる。いきなりの誘いには面食らったけれど、何かあるかも、と期待して午後の予定まで空けていたあたしもあたしだと思う。
32: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 22:02:57.52 ID:feup4BK40
Pさんと二人、どこへ行こうか。かわいい洋服を見繕ってもらうのもいいかもしれない。あたしのかわいさを一番引き出してくれるのはPさんだから。
家に帰ったら、あたしにできる限りのオシャレをしよう。たった今もらった香水も付けて……本当にあたしに似合うのだろうか。でもPさんが好きな匂いらしいからきっと間違いない。
33: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 22:03:36.61 ID:feup4BK40
春の太陽も草木もうきうき気分のあたしを優しく見守ってくれているようだ。太陽にも、草木にも、この気持ちを分けてあげたいな。
34: ◆vFEWRAh8RU[saga]
2017/03/23(木) 22:04:18.90 ID:feup4BK40
今日は幸せな一日!
35: ◆vFEWRAh8RU[sage saga]
2017/03/23(木) 22:06:13.05 ID:feup4BK40
おしまい。有香誕生日おめでとう!
読んでくださった方、ありがとうございました。
36:名無しNIPPER[sage]
2017/03/23(木) 22:15:24.19 ID:+u+dEmn5O
乙
37:名無しNIPPER[sage]
2017/03/24(金) 03:30:45.51 ID:2SAzJ95Z0
乙です
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