過去ログ - 杏「てのひらのあめは」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/01(土) 01:27:39.84 ID:rBrxam3H0
ーーー数年後ーー



「にょっわ〜!!きらりんパワーで、今日も元気にいくにぃ!」


ーーテレビの向こうで、大切な人は今日も輝いている。


コーヒー牛乳を飲みながら、杏はテレビを眺める。


ーー私は、今親の元で仕事の手伝いをしている。ゆくゆくは、社長の座を継ぐんじゃないかな。


ーー事務所のみんなには何も言わずに去った。今思い返しても、薄情な別れ方だと思ってる。


ーーけれどきらりをこれ以上、私のせいで不幸にしたくなかったんだ。


ーーもっとうまくやる方法はあったのかもしれない。


ーーけれど、私はみんなが思っているほど器用じゃないんだ。


ーー周りを遠ざけることでしか、人を不幸にしない方法がわからない不器用な人間だ。


ーー結果として、きらりがアイドルとして輝いているし、これ以上のことは私にとってない。


ーーそしてもう二度と、きらりと会えることはないだろう。


ーー会えばまた心配させてしまうし、今までのことを考えれば、私のような人間はきらりのそばにいるべきではなかったのかもしれない。だから、これでいいんだ。

今日はやけに自分への言い訳が多いな、とひとりごちて杏は郵便物を取り、水にぬれる街を眺めながら、一つ一つ郵便物を確認する。


その中に一つ、手紙などとは明らかに違う、硬い物体の感触があった。


飴玉だ。


心臓が高鳴る。この飴玉の味、袋は忘れるわけがない。きらりと初めて会ったときにもらった飴玉だ。


よくみると、飴玉には小さな便せんがついてた。


さっきまで潤っていたはずののどがやたら乾く。緊張しているのか。


緊張をごまかすために、飴玉を口にした。今となってはもう会えない、大切な人の思い出の味。甘党の杏には、絶妙な甘さのイチゴ味。


気持ちを少し整えながら便箋を開く。


そこには


「必ずトップアイドルになって、会いに行くから」


と書いてあった。


誰からの手紙かなんて、考えるまでもなかった。


甘いはずの飴の味が、どんどんしょっぱくなっていく。


さっきまでの大雨が嘘かのように、外の天気が晴れる。


それと入れ替わるかのように、彼女の机には、大粒の雨が降り注いだ。





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