2: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:21:54.78 ID:rA9xrPx0o
それは一瞬の出会いだったが、今でも弓から放たれる矢の如く、鮮烈に思い出す事ができるだろう。
当時新人アイドル発掘のためのスカウトで、事務所から離れた場所まで来ていた自分は、そこでとある女性に出会う。その女性は、普段と変わらない街並みの中で、一際輝いていた。
3: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:22:51.51 ID:rA9xrPx0o
----そう、その女性は紛れも無く現在活躍中のアイドル、水野翠である。
4: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:25:01.31 ID:rA9xrPx0o
当時の自分は恐れという物を知らなかった。無謀にもこの女性に声をかけてしまったのである。一瞬で通報されてもおかしくはなかった。
今になって思えば、この無謀がなければ、1プロダクションの末端プロデューサーと、水野家の御令嬢などというミスマッチな組み合わせが出会っていなかった事になるし、その令嬢がアイドルになる事はなかったのだが。
5: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:27:09.83 ID:rA9xrPx0o
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6: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:28:29.22 ID:rA9xrPx0o
その時の自分は、まだできたての事務所を放り出し、事務所の主軸に据えるための新人アイドルのスカウトに励んでいる頃であった。
しかしまあそんなに都合よく見つかるはずもなく、当てのない旅をぶらぶらと続けていたのだ。この頃は丁度愛知まで来ていたか。
さてはてそんな時に出会ったのは、まだアイドルの「ア」の字も知らなかったであろう、弓を携えた少女だった。
7: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:31:51.93 ID:rA9xrPx0o
「あの、すみません」
その少女に声をかけてしまった。かけてしまったのだ。
本当に傍から見ればただの不審者である。
8: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:33:35.54 ID:rA9xrPx0o
彼女が怪訝な目つきをしながら、
「いきなりで申し訳ありませんが……、買い被りというものではないでしょうか?」
「そんな事はありません! 絶対に!」
「わ、わかりました。それでは、お話だけでも」
9: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:35:56.75 ID:rA9xrPx0o
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10: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:37:55.60 ID:rA9xrPx0o
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったような」
「確かに名前を言い忘れてましたね。私は水野翠。趣味は弓道。生まれは愛知、育った地も愛知です」
11: ◆zNp0QpB9e.[saga]
2017/04/09(日) 21:41:09.26 ID:rA9xrPx0o
「でも、なんか落ち込んでるようにも見えたけど?」
明らかに図星を付かれたような表情をする。さっきからどうにも話し方に影があるように思えたからだ。これはやはり原因があるのだろうか。
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