過去ログ - これから日記を書く 七冊目
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272: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/07/03(月) 00:14:24.23 ID:A8FG0tc60
音もなかった。それは藍達を含めて誰も認識できないまま、放浪者はすでにソードマンの目の前に存在していた。ソードマンすら、そこまでの接近を許してなお、彼が攻撃の姿勢になってからやっと反射したように後方へと体を動かし――、盾を持つ左腕は斬り飛ばされた。

『―――――――――!』

声はない、苦痛もない。浮かんだ表情は明らかな困惑。

策を練り、強力な兵で強襲し、まだ優勢だとさえソードマンは思っていた。陣形が少し乱された程度で、間隙を突かれるなど、想像するはずもなかった。この一撃はもはや、結果だけが起きたかのような錯覚に陥る。それを現実として受け入れるまでの、同じくわずかな間。

その間を埋めるように、放浪者が持つ刃がソードマンの身体へ再度滑り込んだ。

カランと音を立て、左腕が落ちる。その間を理解できないソードマンが残った腕で剣を振るおうとして、右半身は後ろに、左半身は右側に向かってそれぞれ倒れる。

放浪者が振り返ると、変異体の集団が止まり、藍達も何が起きたか理解していない状況。その奥から法衣を纏った人間と、灰色の狼男がこちらに向かっているのが見えた。

「…殲滅を開始する」

そしてまた、彼は一陣の風のように、烏合の衆と化した変異体の群れへと斬り込んでいった。


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