274: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/07/03(月) 00:32:36.86 ID:A8FG0tc60
だからこそ。
「君のように、プログラムを熟知する人間を、VR空間に招く必要があった」
言葉は出せず、エクスは息をのんだ。AI解析としてハッキングをしていたはずだが、その実ここに招き寄せられたという事なのだから。
「長く1人で廃墟の中を彷徨った孤独感、そして、自分が人間ではないことへの疎外感を、理解しないままEVEは過ごしていた。故に、あのアンドロイドに仲間として興味を示していた。それ自体は構わないが、アンドロイドだけで固まれば、どこぞの超能力者集団のような顛末を待つだけだ。我々はアンドロイドと人間はわかりあえるという確信を、山海と山海として生み出された私は持っている。だからこそ、架け橋足りえる存在は今のEVEには必要だった」
名づけるのであれば、AI思考。それを持つ人間を作り出すことが、今後アンドロイドと人間が共に歩むために必要。山海、そのAI、2人共の総意だった。そしてこのVR空間は、そのために用意し、山海のAIは必要となる時まで管理し続けていた。
「クリスタルに触れるといい。今の君なら、理解できる。それで私の役割も終わる」
こびりついた無愛想な表情に、疲れを帯びた安堵のものに変わっている。そしてエクスは、クリスタルに触れるのを躊躇し、そして魅せられているプログラムの世界に触れた。
強烈な情報がエクスという媒体を通っていく。頭がはち切れそうになる感覚の中で彼が見たのは、美しいクリスタルではなく、消えていく山海のAIだった。
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