92: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/04/30(日) 02:13:20.57 ID:e4Y5Z9kT0
探索組は、当然放浪者不在のまま、警察署エリアの緩衝地帯確保の任務を進めていた。日は昇り、昼になるかならないか程度と、井門は考えながら周囲を見回す。今いるのは井門を主体とした一ノ瀬、林道の3名の班だ。役割は集合地点の確保とその周囲の探索といったところ。
今は集合地点に彼1人だけ、残った2人が周囲を探索している為だ。安全そうに見えるが、実はそうでもない。一番怖いのは銃を持った生存者、言葉を正せば略奪者だ。狙い撃ち出来るような場所で黙っていれば、ホールドアップは間違いなしで、だからと言って回収した物資を盗られるのも癪。
なので、定期的に周囲を確認しつつ、適度に集合地点を動き回る。適度な緊張を維持できるというのは、優れた兵士と言えるだろう。油断をしている素振りは、一切見えない。
その彼が、サプレッサー付きの拳銃を取り出し、構えた。わずかにだが、足音を捉えたからだ。しかし、近づくようなことはしない。何かがいることは間違いないのなら、単独で向かうのは危険。ゾンビならその内出てくるだろうし、生存者もこちらが警戒しているとわかれば攻撃を仕掛けづらいだろう。明らかな警戒状態の姿勢を見せれば、声を出さずとも今離れている2人にも異常を伝えることができる。そういった点も踏まえながらだ。
力強く、蹴る音が響きその方向の上空を見る。ジャンピングゾンビが、こちらに飛びかかってくる光景。反射で1発放ち、膝の力を抜いて前に前転した。その動作から1秒前後で、後ろを滑る音と薬きょうの落ちた音が聞こえる。
素早く井門は立ち上がり、視線だけそこに向けると頭部が欠けたジャンピングゾンビが少しだけ痙攣して、気を少しだけ抜こうとしたその時、先ほどの足音が聞こえた方面から、今度は。
「ちっ、きやがったか」
それなりに想定の範囲内であった井門は、忌々しく呟きながら、アサルトライフルに持ち替える。その向こうには、ぞろぞろと湧いて出るようにゾンビが路地から出てくる光景があった。
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