過去ログ - 安斎都「ドレスが似合う女」
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26:名無しNIPPER[saga]
2017/04/19(水) 22:40:34.17 ID:t0Az6vrk0
 
 高垣さんの調査を始めてから二週間後、私は華々しいドラマデビューをした。役名は「女子高生C」。ヒロインを演じる片桐さんの後ろを、3秒かけて通りすぎる重要な役だ…うん。
 欲を言えば探偵の役をやりたかったけれど、事務所も、世間も“16歳”の方に価値を置いている。
 私は撮影後の昼食中に、片桐さんにそんな相談をした。
「若さは使えるうちが華よ?」
 片桐さんは、何の嫌味もなくそう言ってくれた。片桐さんとは、この仕事で初めて顔を合わせたのだけれど、フレンドリーに接してくれる。真昼間から、ビールをジョッキで飲みながら。
 今日の仕事が終わったとはいえ、片桐さんの飲み方は少し異常だった。
「お酒、好きなんですね…」
「うん。あの子ほどじゃないけど」
 あの子…幽霊、酒好き。そんな連想ゲームをするまでもなく、高垣さんのことだとわかった。片桐さんも、高垣さんと交友があった人物の1人だったから。

「高垣さんも、こうやってお昼から飲んでいたんですか?」
「ううん。隙を見せたら、朝からでも。私か瑞樹さんがいっつも止めてたんだけどねー、私が止められる方になっちゃった! あははは!」
 片桐さんは陽気に笑う。無理をしていることは、すぐにわかった。誰かが、彼女を止めるなり、慰めるなり、何かしなくてはいけない。
 でも、私がやったのは情報を引き出すことだった。
「高垣さんは、結構無茶な飲み方をする人だったんですか?」
「いーや、あの子ザルだから、無茶って感じはしなかったわ〜。ただ、ヒックっ、酔っ払ってくると人に勧めるのよね。あの子基準で勧められると、結構きつかったわ〜、特にP君なんか、いつもベロベロになるまで飲まされて……。
 なんて言ったかな、あのお酒……えーと、くど、」
「くどき上手」
「そーお、それぇ。それも推理ってやつ? まるで……おっと裕子ちゃんのキャラが危ない、あははは!」」
 片桐さんは、馬鹿笑いした。いままで見たアイドルの中で、一番痛々しく笑っていた。
「くどきじょうず、なんて、あの子にしては面白い冗談よね〜。たしかに、私たちみーんなP君に口説かれて、アイドルやってるようなもんだしぃ。誰にでもやさしくしちゃってぇ……あれで楓ちゃんに本気だったなんて、信じない」
 片桐さんは最後だけ、ひどく冷たい声で言った。



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