過去ログ - きらり「諸星をやめる日」
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9:名無しNIPPER[saga]
2017/04/25(火) 23:18:12.57 ID:diQk9yXt0
「羨ましいよ。それだけ想える相手を見つけられたんだ。僕もあやかりたいくらいだけどね」

「……彼女さんとは、別れちゃったの?」

 あぁ、と僕は声を漏らす。これもまた昔話の一つだ。これくらいなら、本当のことを話してもいいだろう。

「そんなことを言ったこともあったっけな……ごめんきらり。僕に彼女がいるって話……あれは嘘だった」

「え? だってあの時、Pちゃん……」

「嘘も方便だよ。君はアイドルだろ。そうでなくても、相手がプロデューサーだなんて外聞が悪い」

 数年前、きらりに告白された。互いの立場を説明して諦めてもらう方法もあったと思う。

 だけど僕はそうしなかった。既に思い人がいると嘘をついたのだ。理を説くよりはその方が角が立たないだろうという判断だったが、目論見通り彼女はすんなり諦めてくれた。

 ……プロデューサーでありたかった。彼女にはアイドルのままでいてほしかった。

 二人の関係では、枕営業なんて単語も容易に連想される。色んな思惑と、打算と、思いやりとが入り混じった結論だった。

 嘘をつかれていたという事実に対し、やはり彼女はどこか釈然としない様子だった。

 しかし同時に、それは仕方のないことだということも理解しているようだった。だからなおさら釈然としないのかもしれない。


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