1:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 11:55:16.41 ID:8DsDoAX50
5月に入ってから急に暖かくなった。  
  窓から見る天気はまさに五月晴れであった。冬の寒さもここまでは追ってくることはない。  
    
  自分の陰毛をすべて剃り落としたときのような、すがすがしい空気だった。  
  
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2:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 11:55:50.77 ID:8DsDoAX50
 連休真只中の今日は特にやることがなかった。 
 だから昼からビールを飲みながらテレビの前のソファに腰を掛けた。 
  
 遠い南の国が水不足に喘いでいるということを深刻そうな声色で語ったアナウンサーの女は、その直後に明るい声で連休をカスピ海でヨーグルト浴を楽しむ人々の特集を語る。 
  
3:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 11:57:08.32 ID:8DsDoAX50
 きっと彼女にとって、ニュースの一つ一つは何の思い入れもないことなのだろう。 
 もちろん僕にとってもどうでもいいことだった。 
  
 なんの関連もなく様々な事を話し続けるアナウンサーは、逆に何かを暗号めかして誰かに伝えようとしているのではないかとさえ思える。 
  
4:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 11:58:01.10 ID:8DsDoAX50
 昔戦争があったとき、オランダでは風車の羽の角度を用いて連絡を取り合ったらしい。 
 今日では、アナウンサーが来ている服や髪形、そして彼女が話す事柄を用いてそれが行われているのだ。 
  
 世界はいつも僕のあずかり知らぬところで回っている。 
 そういった疎外感を感じるのは、きっと連休で家に引きこもっているからだろう。 
5:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 11:59:15.87 ID:8DsDoAX50
 昼食を食べたら買い物にでも行こうと思った。 
 ぼろぼろになったテニスシューズを買い替えようと思ったのだ。 
 シャワーを浴び、着古したポロシャツを着る。 
  
 昼食は簡単なサラダを作った。料理をしているとき、冷蔵庫の中のビールの本数が残り少なくなっていることに気付いた。 
6:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 12:00:21.99 ID:8DsDoAX50
 どうせならいっぺんに用事を済ませてしまいたい。 
 明日も休みなのだし、明日車で出かけよう。 
 今日は残り少ないビールを開けてしまうことにしようと思った。 
  
 ただ出かける準備だけはしてしまっていたので、散歩には出かけることにした。 
7:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 12:01:06.70 ID:8DsDoAX50
 外に出てみると、本当に気持ちのいい陽気であった。 
  
 窓から見た空は素晴らしいものであったし、外に出たら気持ちはいいだろうなとは思っていたけれど、それを上回るものだった。 
 出来立てのカップヌードルに陰茎を差し込んで痛い目をみたあのときとは違う予想の裏切られ方をした。 
 雲と空のコントラストが美しく、初めて空を見上げたかのような感動にとらわれた。 
8:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 12:02:19.29 ID:8DsDoAX50
 公園に行くと、たくさんの小さな子供たちが遊びまわっていた。 
 そしてそれを見守る母親たちは、彼女らの役目を全うするでもなく井戸端会議に盛り上がっている様子で、こちらに気づいてもいないふうだった。 
  
 僕は藤棚の下のベンチに腰を掛けて、藤の屋根の隙間から覗く空を眺める。 
 空は広くとも、僕に割り当てられた空は手のひらほどもなかった。 
9:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 12:05:47.63 ID:8DsDoAX50
 そのままじっと小さな空を眺めていると視線を感じた。 
 母親たちは、彼女らの職務を思い出したらしい。 
 ぼろぼろの靴を履き、よれた服を着ている僕は不審者たる資格を十分に満たしているらしい。 
 居たたまれなくなって、その場を後にした。 
 藤棚を介さずに見上げた空は大きく、そしてきれいだった。 
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