過去ログ - 早坂美玲「なぁ、今日って……」
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4: ◆S6NKsUHavA[saga]
2017/05/09(火) 01:48:06.80 ID:/HocY19QO
 リリカルなピアノの音色に包まれながら、車はゆったりとテールライトを追いかける。幾度か流れる光の筋を乗り換え、瞬く信号に導かれてたどり着いたのは、一件の小さな建物だった。

「よし、着いたぞ」

 三台ほどしか停められないような手狭な駐車場に車を置き、プロデューサーは車を降りて助手席のドアを開けた。美玲は怪訝な表情を浮かべたまま降りると、レンガ造りの建物を見上げる。三角屋根の、おとぎ話にでも出てきそうな建物。窓からは暖かそうな明かりが漏れており、入り口とおぼしき木製の扉には、何語か分からない文字で書かれた看板が控えめに取り付けられていた。その下にフォークとナイフの絵が描かれており、辛うじて何らかの飲食店であることが分かる。

「プロデューサー、なんなんだ、ココ?」
「入れば分かるよ」

 顔いっぱいに疑問符を浮かべる美玲を、プロデューサーが促す。若干躊躇した美玲だったが、ここで及び腰になったら彼に笑われそうだ。そう思い、彼女は意を決して扉を開いた。
 そして、室内に一歩を踏み出した、その時。
 ぱぁん、と言う乾いた音の群れと祝福の言葉が、一斉に美玲を包み込んだ。

「お誕生日おめでとう!!」
「えッ!?」

 驚いて閉じてしまった目を、ゆっくりと開く。その先の光景に、美玲は思わず声を漏らした。
 そこには、先ほど返事を返した輝子や乃々、凛や紗南たち同僚アイドルの姿があった。彼女たちが囲む大きな机には様々な料理が置かれ、美味しそうな匂いを振りまいている。そして中心には『Happy Birthday, Mirei.』の文字が書かれた小さな旗が立てられていた。
 あまりに想定外の事が起こりすぎて麻痺していた頭の中に、じんわりと理解が広がっていく。振り返ると、笑顔のプロデューサーがそこにいた。

「お、覚えててくれた……のか?」

 まだ呆然とした表情の美玲に、プロデューサーは愉快そうに答えた。

「当たり前だろ。誰がお前達のプロフィール書いてると思ってるんだ」

 そう言って、ポンと軽く彼女の頭を撫でる。くすぐったそうにしてから慌ててその手を払いのける美玲に苦笑しながら、プロデューサーは改めて言った。

「誕生日おめでとう、美玲」
「あ……アリガト……プロデューサー」

 照れくさそうに礼を述べる美玲。プロデューサーは彼女に手を差し伸べると、おずおずと伸ばした彼女の手をしっかりと掴んで店の奥へと連れて行った。




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