2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:40:22.89 ID:CcDwjzwy0
「 」
留学しよう。そう決めたのがいつだったかは覚えていない。
強烈なきっかけがあったのではなく、ただいきたいからという理由で漠然とそう決め、両親からの了解も得て大学の審査も通った。準備は滞りなく進んだ。期間は半年。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:42:58.26 ID:CcDwjzwy0
飛行機を降りるとホームステイでお世話になる陽気そうな4人家族がホワイトボードいっぱいに「KAKO」と書いて笑顔で掲げていた。
一通り挨拶と自己紹介を済まし、車で半年間お世話になる家へ案内された。
とても大きい家で、さぞお金持ちなのだろうと聞くと、この辺では普通のサイズだという。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:44:50.37 ID:CcDwjzwy0
その後すぐにウェルカムパーティーとしてバーベキューをしてもらった。
そこで、人の匂いを嗅いだと思ったらいつの間にかいなくなったりと自由なルームメイトを、本人に代わり家族のみなさんから紹介してもらった。
一ノ瀬志季17歳。日本人で、こちらで飛び級で大学生をやっているらしい。大学では天才と呼ばれ特別扱いされ、まるで教授のようにすでに自分で好きな研究をさせてもらっているという。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:46:19.35 ID:CcDwjzwy0
留学スタートは順調だった。志季ちゃんとは同じ大学ではあったが学部が違い、大学で会うことはほとんどなかったが、英語力には自信があったし、人当たりも悪くはないと自負している。友達もたくさんできた。講義も大変ではあったけれども、十分ついていけた。
1ヶ月ほど経ったある日、友達からホームパーティーに招待された。食事とおしゃべり楽しんでいると、唐突にビンゴ大会が始まった。
アメリカではお金をかけるギャンブルとして定着していると聞いていたが、このビンゴは1列ビンゴした人から用意された景品をゲットできる日本でよく見る方式。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:48:21.88 ID:CcDwjzwy0
結局、私は5番目の数字をコールされたとき、ビンゴとなった。
最速とはいかなかったが、我ながらありえないスピードである。当然、主催の人も何回も確認してたし、見せ合っていた友人も唖然としていた。
主催の人は確認を終えると、カードを掲げて、こちらを見て叫んだ。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:50:13.78 ID:CcDwjzwy0
このときはまだその日だけで済んだが、友達と交流していく中で当然運を試す機会がないわけがなく、次第に私はlucky girlとして認知され、lucky girlと呼称されるようになった。
結局、アメリカでも「私=幸運」だった。
ふとそう思ったとき、私は初めて留学に行きたかった理由が「私=幸運」から解放されたかったからだと知った。
8:名無しNIPPER[sage]
2017/05/15(月) 23:51:11.94 ID:4Qfke/oho
志希
9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/15(月) 23:51:44.38 ID:CcDwjzwy0
そんなある日、熱を出した。
ただの風邪で、さほど重いわけでもなく2日で熱は引いたものの、1度休んだ途端に大学に行く気が失せてしまった。
どうも顔色も良くなかったらしく、様子を見に来たお母さんにもう1日休みなさいと言われ、3日目の自主休講を選んだ。
10:>>8 ほんとだ……失礼しました。志希ちゃんごめん[sage saga]
2017/05/15(月) 23:58:08.03 ID:CcDwjzwy0
夕方になって騒がしい足音が迫ってくると、相変わらずノックもなしに扉が開かれ、そのままの勢いで志希ちゃんがベッドに飛び込んで来た。
元気いっぱいだった。自由奔放だった。天才と呼ばれ、他の人間から特別視されている人間が、私と同じようなしがらみを感じていそうな立場の人間がこのように生きているのが、私は不思議でならなかった。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/16(火) 00:00:19.00 ID:Pvs0dD/C0
いつもは笑って適当に付き合っていたのだが、この時は心が疲れていたからか、気がつくと口にしていた。
「志希ちゃんは天才扱いされるの嫌じゃないんですか?」
志希ちゃんは少し拍子抜けたような顔をしてから笑顔で言った。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/16(火) 00:01:17.32 ID:Pvs0dD/C0
なんとなく事情を察したらしい志希ちゃんは、ベッドの傍に椅子を持ってくると座っていつもより少しだけ真剣な声音で話し始めた。
「あたしね、来週日本に帰るんだ。なんでか分かる?」
私が首を横に振ると、にゃはっと笑って
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