過去ログ - 佐藤心「はぁとがかわる」
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9:名無しNIPPER[saga]
2017/05/21(日) 16:04:56.94 ID:BbtAjqcW0
 二人きりになってもはぁとさんの態度は変わらなかった。

 澄み切った青空を見て、はぁとさんは

「今日もいい天気♪これならお仕事がんばれそう」

 と大きく伸びをした。僕は横でそうですねと返事した。

 選挙の話題は出さなかった。出なかった。一番話すべきこと、一番話したいことのはずなのに。
 
 僕の思いをはぁとさんは読み取っているようだった。

「今朝起きたらさ、寝草がすごいことになってて」

 とはぁとさんは全身を大げさに動かし、いかに寝草が凄かったかを話した。
 それは大変でしたね、と僕は言った。

 まるでハリネズミのようだった。
 僕とはぁとさんはどうでもいい言葉を並べ、適切な距離を測っていた。
 選挙の話題を口にすれば、お互いに痛みが伴うことがわかっていた。

 僕は優しいハリネズミだ。はぁとさんから言ってくれれば、
 痛みを受け止め、痛みを分かち合うことができるだろう。けれど、

 僕は臆病なハリネズミだ。
 自分からはぁとさんを傷つける勇気が、はぁとさんに踏み込む勇気が僕にはない。




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