285:名無しNIPPER[saga]
2017/10/09(月) 13:17:39.71 ID:kWAsA2wb0
彼女のことについて知るのは、それが初めてのことでした。彼女は私に何も訊かなかったし、私も彼女に何も訊きませんでした。お互い避けていたのだと思います。
……だから、彼女の個人的な情報を、そのとき初めて知りました。
酔っているのなら何を訊いてもいいのかな、と思って、彼女に質問をしてみることにしました。
"好きな人はいますか?"と。
──ですが。
はっきり言って、それは失敗でした。
彼女は私を指差して、それから微笑みました。
きっとどこかで、期待はしていたのだと思います。私が感じている気持ちを彼女も感じているのなら、それがどれだけ嬉しいことなのかということを。
でも、実際にそれを訊いてまず一番最初に頭に浮かんだのは後悔でした。
胸の高鳴りよりも、少しばかりの嫌悪感に私の頭の中は支配されました。
言葉の意味をわかっていないふりをしました。それが、私のためにも彼女のためにもなることだって、そう思ったから。
朝が来て、彼女は驚いた様子であたりを見渡しました。
覚えてなくてよかった、と私は思いました。
それから、彼女と私の行動範囲に私の家が加わりました。
まだ、その夜のことは私の胸の中に秘めたままでいます。
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