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795:名無しNIPPER[saga]
2017/12/05(火) 00:12:44.05 ID:HHfyV3AE0

 でも、いくら踏み出そうとしても足がうまく動いてくれない。
 吐きそうになるほどの不快感。金縛りにでもあったように、身体が強張る。いつもそうだった。

 佑希がこちらに縋るような目を向けている。
 それだけで、俺は彼女を慰めなくてはならないと思ってしまう。

 ──あなたは、お兄ちゃんなんだから。

「おにい」と弱々しい声で呼ばれる。
 ぎりぎりと頭が痛む。俺はどうしてこんなにも罪悪感を感じているのだろうか。
 
「……お兄ちゃん?」

 と奈雨が振り返る。
 心配するような目を向けている、ように思える。
 けれど、俺の目は佑希に向いたまま動いてくれない。

 彼女はぽろぽろと涙を零していた。
 いつもの大人びた雰囲気とはひどくかけ離れた、迷子になった幼子のような表情で。

「おにいは、やっぱりあたしのことはいらないの?」

「……」

「……奈雨のほうが、あたしよりもいいの?」

 俺は彼女のこういう表情を見ることがたまらなく嫌だった。
 過保護なまでに優しくしていた理由はそれだ。彼女にこういう表情を見せてほしくなかったからだ。




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