901:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:38:34.21 ID:xOgRNUoX0
「いや、あれはそれだけじゃないでしょ」
だから、思わず敬語も忘れて返すと、
「うん、それはわかってる」
と胡依先輩はそれまでの笑みをひっこめて、つまらなさげに夜空に手のひらを掲げた。
「いま会ってみたら、そうでもなかったんだけどね。
……なんていうか、昔の私は、しゅかちゃんといることがつらかったの」
「……」
「知らなくていいことは、聞こえない振りをして、
知られたくないことは、気付かれないように気を張って、
そういうやり過ごし方がだいっきらいで、でも、そうすることしかできなくて」
何の話をしているのだろう、と思う。
いつものように胡依先輩の言葉は、俺だけには向けられていない。
「知らなくていいところまで知られることが嫌だった」と彼女は言う。
「知られたくないところまで知られることが嫌だった」と彼女は繰り返す。
「何ひとつ話さずにへらへら笑っている私を肯定してほしかった。
錯覚でも、演技でも、見掛け倒しのハリボテでも、それは、それで、ひとつの私だと思ってたから」
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