909:名無しNIPPER[saga]
2017/12/28(木) 15:48:36.41 ID:xOgRNUoX0
「たとえば、勉強したり、歌をうたったり、ギターを弄ったり、どこかに出かけたり、
そういうことは、容易くできてしまうの。描けなくなったところで、私の生活は、何ひとつとして変わらないの」
誰にも強制なんてされてない。
私の代わりはいくらでもいる。
同じように、それが絵でなくても、何か別のものに代替可能なのかもしれない。
それでもね、と彼女は顔を上げる。
「……胸が、締め付けられるの」
ぐっと胸元を握りこむ彼女の拳は、その痛みを表すように戦慄いている。
「ふとしたときに、どうしようもなく苦しくなるの。
教室の窓から外を眺めてるときに、月明かりのない夜道をひとりで歩いてるときに、
前までは嫌いだった曲を聴いているときに、こういうふうに誰かと話してるときに」
どうして私は、こんなことをしてるの?
どうして私は、こんなところで足踏みしてるの? って。
音が聞こえて、渇いた風が頬を撫でて。でも、私の内側までは届かなくて。
欠落しているのは、ただひとつだけのはずなのに、もしかしたら、他のものでもいいのかもしれないって思うのに、
けど……私が生きてきたすべてが、否定されているように思えて。
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