929:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:04:10.38 ID:LnmL9/o10
その代わりに、私との距離を一歩詰め、半身に寄りかかってくる。
そのままでは取り零してしまうのではないかと座ったまま背筋を伸ばして目を合わすと、彼女の表情はそれまでの真剣なものから慈しむようなものへと変化していく。
「でもね、それだけってわけじゃないの」
柔らかな微笑みと共に放たれた言葉に頷くよりも早く、彼女はもう一度その言葉を繰り返す。
私の視界に映るのは彼女だけ。目を逸らしてはいけない。続く言葉に、耳を傾けなければならない。
「ねえ、シノちゃん」
確認を取るように、彼女は私を呼ぶ。
同時に、地面に下ろしていた手に彼女の指先がそっと触れた。
「──私は、シノちゃんのことを、もっと知りたいって思うよ」
どくりと、心臓が波打つ。
思わず、何の意味もなさない声が漏れ出てしまう。
彼女が発したのは、一番掛けてほしかった言葉で、一番掛けてくれるとは思っていなかった言葉だった。
「知りたいって……何をですか」
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