930:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:04:46.07 ID:LnmL9/o10
踏み越えるかどうか決めるのは、私が判断するべきことなのだと思っていた。
でも、そんな気持ちとは裏腹に、訊いてほしいとも思っていた。……多分、自分のことを自分で語るには、かなりの勇気を必要とするから。
「理由」と部長さんは囁いた。さっき言った言葉と同じようで、意味の異なる言葉。
後付けではなく、それ自体が既に意味を成しているもの。
「シノちゃんが絵を描けなくなった理由を、私は知りたいな」
「……」
「もし話したくないなら、無理に訊いたりはしないよ。
そういうことよりも……なんていうか、私が知りたいと思ったことだけは、知っててほしいっていうか……その、ね」
考えがそこまでまとまっていないのか、彼女は口を開いて閉じてを繰り返す。
その間も、もっともらしい理由は、飾り立てた言葉は、何一つとして口にはしてこなかった。
感じたのは、思い込みとは違った、ある種の確信を持った"予感"のようなもの。
だから……それゆえに、なのかな。
本当に、私のことを知りたいがために、そう問うてきたことが伝わってきてしまう。
私のことを話してもいいのだと、そう思ってしまう。
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